遺産分割の対象になる財産とならない財産とは?
被相続人が相続開始時に有していた財産的権利義務は、被相続人の一身に専属するものを除いて基本的には相続の対象となり、相続開始により相続人に承継されます。
遺産分割の対象?
相続の対象となる財産すべてが、遺産分割の対象とはなりません。 遺産分割の対象から除かれるものがあります。
以下具体的に述べていきます。
1.遺産分割の対象となる財産
①不動産
②不動産賃借権
相続開始により共同相続人による準共有となるため、遺産分割の対象となります。
③現金
現金遺産分割の対象となります。
④預貯金等の金銭債権
2において後述します。
⑤死亡退職金
規定の有無により個別的に遺産性を検討しています。
⑥代償財産
原則として遺産分割の対象とはならないものの、当事者全員の合意があれば遺産分割の対象とすることができるとされています。
⑦遺産から生じた果実及び収益(相続開始後の賃料、利息及び配当金等)
判例・実務ともに、⑥と同じ扱いとしています。
⑧株式
判例は、共同相続人が株式を準共有する状態となり、遺産分割審判の対象となりうると判示しています。
⑨投資信託
判例は、金銭債権に準ずるものとして、分割債権・可分債権とされる預金債権に近いものとして取り扱うのが妥当と考えられています。
⑩ゴルフ会員権
ゴルフ会員権預託会員制のうち会則が相続性を肯定している場合、相続について定めがない場合、および株主会員制については、相続の対象となり、遺産分割審判の対象となります。
ただし、譲渡にはゴルフ会社の承認が必要です。
2.遺産分割の対象とならない財産
①預貯金等の金銭債権(可分債権)
預貯金等の金銭債権は、相続開始とともに当然分割され、各相続人に相続分に応じて帰属するとされています(最一小判昭29・4・8民集8巻4号819号)。
しかし、家庭裁判所の遺産分割手続き実務では、相続人間において、預金債権を遺産分割手続における分割対象に含める旨の合意が成立すれば、合意に従って、預金債権を分割対象に含めて審理をする取り扱いをすることが多いようです。
また、金融機関の実務では、相続人全員の署名押印のある遺産分割協議書または相続人全員の捺印のある同意書及び印鑑証明書を提出しないと、預金の払い戻しに応じないことが多いようです。
②金銭債務(相続開始前の債務)
金銭債務は、遺産分割は積極財産(プラスの財産)について行うものであり、相続により当然に各相続人に法定相続分で承継されるため、遺産分割の対象とはなりません。
なお、遺産分割の調停実務では、相続人の一人が遺産を単独で取得する代わりに債務も全額負担する内容の協議が成立することがありますが、その場合には、債権者である金融機関等が承諾しない限り、他の相続人が債務の負担を免れることはできないことに注意が必要です。
③生命保険金
保険契約者が自己を被保険者(被相続人)とし、相続人中の特定の者を保険金受取人と指定した場合、指定された者は固有の権利として保険金請求権を取得します。そのため、遺産分割の対象とはなりません。
ただし、生命保険金が遺産全体に占める割合があまりに大きい場合遺産として持ち戻される場合があります。
④動産(貴金属、着物、家財道具等)
基本的には遺産分割の対象にはなりません。
余程高価な物などは対象となり得ます。
以上述べてきましたが、事案ごとに変わってくることも多々あるため、遺産分割の対象に迷われたら是非一度当事務所の初回無料相談をご利用ください。
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