相続でお困りの方へ
目次
相続問題は意図せず突然に起こります。親や親しい人が亡くなるだけでも悲しみに耐えられないことですが、それに伴って、相続争いまで発生すると、精神的負担は計り知れないものがあります。
・兄弟から、理不尽な遺産分割協議書に署名・押印を求められた
・母や兄弟姉妹が結託して、自分に一方的に不利な遺産分割を進めようとしている
・遺言書が作成されていたが、自分の取り分が法定相続分より遙かに少なく、本当に親が作成したのかわからない
・いわゆる腹違いの兄弟と遺産分割をすることになったが、紛争となるのが不可避な状態にある
遺産分割において相続人同士で紛争が生じるのは、当事者の中で、誰かが自分の都合の良いような条件での相続をしようとしている時です。そのような主張をする他の相続人には、血縁関係があるだけに尚更感情的な問題が生じてしまい相続人が当事者同士で話し合っても埒が明かず、争いは長期化し、些細な事で膠着するなど精神的に消耗戦になってしまうこともままあります。
そのような場合、 弁護士は最終的に訴訟になった場合の司法の判断を念頭において、あなたがどのように交渉すべきかをアドバイスすることができます。また、場合によっては、あなたの代理人として、あなたに代わって、相手方と交渉することもできます。当事者同士にとっては重要だと思っていることでもプロである弁護士ならではの視点で見ると案外すぐに解決したりします。
このような場合は、できるだけ早いタイミングで一度弁護士にご相談ください。一旦、当事者同士で感情的に揉めてしまうと、解決までに膨大な時間がかかることが多いのです。揉める前にご相談いただければ、迅速な解決の可能性が高まります。早ければ早いほど、選びうる選択肢は増えます。選択肢が多ければ多いほど、早期に満足のいく結果が出やすくなります。
また、ご相談の際は、今抱えている疑問、浮上している問題、親類縁者の状況、故人のこと、等々、より多くの情報があればあるほど、アドバイスがしやすくなります。
相続人家系図や財産資料などご持参頂き是非一度当事務所の初回無料法律相談へいらして下さい。
きっと何か得るものがあるはずです。
相続に関する基礎知識
◎遺言書の種類について
まず、遺言書の種類について説明していきます。
1、遺言書の種類
遺言書には以下の3種類があります。
(1)自筆証書遺言
全文を遺言者本人が自筆で作成する遺言書です。
(2)公正証書遺言
公証人が公正証書として作成する遺言書です。
弁護士に相談すると間違いなく進められるのはこの遺言です。
(3)秘密証書遺言
公証役場で存在のみ認証してもらう遺言書です。
内容を秘密にできますが、中身についてのチェックは受けないので、確実性はさほど高くありません。自筆証書遺言も公正証書遺言も秘密証書遺言も、完成した遺言書の効力はすべて同じです。公正証書遺言が特に強力というわけではありません。
「公正証書遺言を残すべき」
と声を大にして言えます。
というのは、自筆遺言を残しても何か手違いがあり効力が否定されると、無駄に相続人間の心情を煽り、対立を深めてしまう場合があるのです。(自筆証書遺言でのよくある失敗例はこちら>>)
その点、公正証書遺言であれば、効力に問題はなく、遺言される方の意思として受け止められやすいと言えるのです。
また、公正証書にすればよいというものではなく、その内容を求めた結果に出来るようにする必要があります。公正証書はあくまでもそのような書面が存在したことを証明するためのものであり、内容を確実にするには弁護士に相談して、文章にしてもらうことをおすすめします。
せっかく公正証書遺言にしたのに、法律的に意味のないものとなっており、遺言がないのと同じという洒落にならない相談を受けることがままあります。
2、遺言書が無効となる場合
遺言書の効力が失われるケースとして下記のような場合があります。
(1)遺言が無効な場合
特に自筆証書遺言は、公正証書遺言や秘密証書遺言に比べて法律的に無効となるケースが見受けられます。自筆証書遺言は誤った書き方がなされている場合が多いためです。
たとえば、「本文がパソコンで作成されている」「遺言書に日付が入っていない」「署名・捺印がない」「遺言書の修正方法が間違っている」といった場合です。
(2)法定相続人全員が合意した場合
遺言書があると、基本的には遺言書通りに遺産が分配されますが、その内容は必ず守らねばならないわけではありません。
特定の相続人の相続分を多くされていたり特定の相続人に特定の相続財産を相続させる遺言書があったりする場合において、相続人全員が合意すれば、遺言書と異なる内容で遺産相続することも可能です。
遺言書通りに遺産相続を行わなくても罰則などはありません。
(3)遺留分侵害請求が行われた場合(遺留分侵害請求について詳しくはこちら>>)
遺言が遺留分を侵害している場合、遺言書の効力は一部失われる可能性が高くなります。
遺留分を侵害された相続人が遺留分減殺請求権を行使すると、その分は遺留分権利者(相続人)に返さねばなりません。
遺留分のない兄弟姉妹以外の法定相続人の遺留分を無視した遺言書を作成すると、後にトラブルの元になる可能性があります。
ただ、あくまでも、遺留分減殺請求権は、形成権であり、遺留分を侵害されたものが行使しないのであれ
ば、遺言書の内容通りの遺産分割なります。
3 相続税申告の手続き
(1)相続税申告が必要な際送付されてくる書類とは
相続税申告が必要な場合、税務署から以下の2種類のどちらかの書類が送られてくることがあります。
・相続税についてのお知らせ
→相続税が発生する可能性のある方全般に対して周知する意味合いで送られるものです。
・相続税の申告書についてのご案内
→亡くなった方の財産や所得状況などからして相続税が発生する可能性が高い方に対して送られてきます。「相続税の申告書についてのご案内」の場合、積極的に相続税の申告を期待されていると考えましょう。
(2)相続税の申告が必要かどうか
相続税には基礎控除があるので、控除の範囲内であれば申告は不要です。
相続税の基礎控除は、以下のとおりです。
3000万円+600万円×法定相続人の数
遺産総額から負債や葬儀費用などを引いた課税対象遺産総額が上記の基礎控除額を下回る場合、相続税はかからないので申告は不要です。
(3)相続税の申告期限
相続税は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に申告と納税の両方を行う必要があります。
延滞税や加算税を課されるリスクもあるので、早めに対応しましょう。
(4)相続税申告手続きの準備
①法定相続人の調査・確定
まずはそのケースにおける「法定相続人」を確定させましょう。
被相続人の出生時から亡くなるまでのすべての戸籍謄本、除籍謄本、改正原戸籍謄本を取得して相続人を確定させます。
たまに、聞いていなかった元奥様やお子様がいらっしゃることがわかることもあります。
②相続財産の調査・確定
次に相続財産(遺産内容)の調査と確定が必要です。
現金、銀行預金、土地建物などの不動産、株式や国債、投資信託、自動車などになります。
借金などの負債も相続の対象になります。
葬儀費用も相続財産からの差し引きの対象になるので領収証等をとっておく必要があります。
調査が済んだら遺産目録(財産目録)の表を作成します。
(財産目録について詳しくはこちら>>)
わからないものも例えば不動産であれば固定資産税の納付書や株式なら株式総会の案内などが送られてきて知ることもあります。
③必要書類の取り寄せ
相続税の申告には、被相続人の戸籍謄本類、相続財産に関する資料、相続人の戸籍、ケースによっては遺言書や遺産分割協議書等も必要になります。
④「相続税の申告書」の作成
必要書類を揃えたら相続税の申告書を作成して所轄の税務署に提出します。
相続税の申告書は国税庁のHPでダウンロードできます。
相続税の申告は個人でもできますが、税理士に依頼することをおすすめします。
必要書類を指示してくれ、それさえ行えば適切に処理してくれます。
特に、減税の余地があるかどうかを調査してくれ、税理士費用を超える減税になる場合も多々あります。
当事務所では提携している信頼できる税理士をご紹介することも可能です。
お気軽にご相談ください。
4 期限がある相続に関する手続
相続に関する手続きには期限があるものもあり、注意が必要です。
(1)死亡届の提出から年金・健康保険の手続(7日~14日以内)
死亡届は死亡を知った日から7日以内に市区町村役場(被相続人の本籍地か死亡地または届出人の住所地)に提出する必要があります。
外国で亡くなられた場合の期限は死亡を知った日から3ヶ月以内です。
年金受給者が死亡した場合は年金事務所などで受給停止の手続きが必要です。
国民年金の場合には死亡日から14日以内、厚生年金の場合には死亡日から10日以内が期限となっています。
国民健康保険証の返納は死亡日から14日以内です。健康保険でも社会保険でも、死亡届を出せば葬祭費など受け取れるので、早めに行いましょう。
いずれもかなりタイトなスケジュールとなります。
大切な人がお亡くなりになっただけでも大変なのに、更にこのような手続を短期間でやらなくてはならない。本当に息つく暇もないということになります。
(2)相続放棄・限定承認(3ヶ月以内)
遺産の中に負債がある場合などには相続放棄や限定承認によって対応する必要があります。これらの手続きには「自分のために相続があったことを知ってから3ヶ月以内」という期限があります。この3ヶ月を「熟慮期間」と言います。
基本的には相続人の死亡があったときから熟慮期間がカウントされます。相続財産の存在を知らなくても、知らないことに過失があったら熟慮期間がカウントされてしまうので注意しましょう。
この「3ヶ月」ですが本当にあっという間に来ます。
プロである私たち弁護士でも、相続放棄をお受けする際は最低でも1ヶ月は頂きます。
特に、戸籍を遠方に請求しなくてはならない事案では1ヶ月ではお受けできません。
もし、相続放棄をご検討されており、弁護士に申述をお願いするつもりなら、今すぐに問い合わせをしてください。
限定承認ですが、相続財産がプラスであれば、プラスの部分を相続、マイナスであれば法規という非常に
使い勝手の良い制度に思われがちです。
しかしながら、相続人全員の申述が必要となります。これは本当に大変です。
足並みがそろう方が稀と言えます。
10年を超える弁護士経験の中で、限定承認をしたときは皆、相続人が少人数で、かつ、全員で相談にいらっしゃった方に限られています。
もし、限定承認をお考えなら、すぐに他の相続人の方と連絡を取り、ご意向を確認してください。
(3)被相続人の所得税の準確定申告(4ヶ月以内)
被相続人が所得税の確定申告をしなければならない立場だった場合、その手続きは相続人が代わりに行わなくてはなりません。
この場合の確定申告を「準確定申告」と言います。準確定申告の期限は相続開始があったことを知ってから4ヶ月以内です。
当事務所では、提携税理士の方を紹介しております。費用も数万円であり、後に憂いを残さないためにも税理士に任せることを非常におすすめします。
(4)相続税の申告(10ヶ月以内)
相続税申告は、相続が開始したと知った日の翌日から10ヶ月以内に行う必要があります。その日までに納付もしなければならないので納税資金も用意しておかねばなりません。
申告期限までに遺産分割協議が成立していなかったとしても、相続税は先に申告納税する必要があります。法定相続分に応じて申告納税を済ませ、後に遺産分割協議が成立したときに修正申告や更正請求によって対応しましょう。申告しなければ延滞税や無申告加算税などを課されるリスクもあるので、確実に申告する必要があります。
繰り返しになりますが、税理士の方に任せることが賢明と言えます。
(5)遺留分侵害額請求(1年間)
兄弟姉妹の以外の法定相続人の最低限の遺産取得分である「遺留分」を侵害すると、遺留分の権利者が侵害者に対して遺留分の返還請求をできます。この請求を「遺留分侵害額請求」と言います。
期限は「相続の開始と減殺対象となる贈与や遺贈があったと知ってから1年以内」です。
また相続開始から10年が経過したときにも権利が消滅します。なお不動産の名義変更(登記)には期限がありませんが、被相続人名義のまま放置しておくとトラブルの原因になるので、早めに対処すべきです。
遺産相続の際には期限や期間制限のある手続きがたくさんあります。
注意したいのは、遺留分減殺請求権を行使する意思表示を確実にすることです。
方法としては、内容証明郵便を送りその中にしっかりと記載しておき、もしくは、遺留分減殺請求の調停を申し立てるという2つがあります。
弁護士に依頼してどちらにするかを決め、書面も作成してもらうことをおすすめします。
5 認知症の方が書いた遺言書の効力と無効にする方法
認知症の方が書いた遺言=無効とは限りません。
遺言をするには遺言能力が必要ですが、認知症でも最低限遺言をする程度の判断能力があったら有効な遺言をできるからです。
成年後見人がついていても、一時的に判断能力が回復している状態であれば遺言できます。ただし、認知症が悪化して遺言書作成のための最低限の意思能力すらなくなっている場合、本人が作成した遺言は無効です。自筆証書遺言だけではなく公証人に作成してもらう公正証書遺言であっても無効になる可能性があります。
遺言書が偽造や変造の場合、本人がだまされたり脅迫されたりして無理やり作成させられた場合、錯誤にもとづく場合、内容が公序良俗に反する場合などにも遺言書は無効になります。自筆証書遺言などで遺言の方式違背になっている場合も無効です。
遺言能力がないことを根拠に無効だとお考えであるなら、各種資料を揃えた上で一度弁護士に相談することをおすすめします。弁護士の中でも相続案件を扱っている件数にはかなり差異があります。相続に注力する弁護士であれば、裁判で問題になるポイント熟知していますので、より具体的な回答を得られると思います。
(1)遺言書が無効であると主張するには、裁判手続きで遺言の無効を確定させる必要があります。
その手続きは下記の通りです。
① 遺言無効確認調停
まずは家庭裁判所で「遺言無効確認調停」を申し立てて、トラブルの相手方と話し合いをしましょう。あなたも相手も両方が「遺言が無効」と納得すれば、調停で遺言の無効が確認されます。すると遺言書を無視して遺産分割協議を進めることが可能です。
② 遺言無効確認訴訟の提起
調停が決裂した場合には、遺言無効確認訴訟を提起して裁判で遺言の有効性を判断してもらう必要があります。訴訟に勝つためには、遺言が無効となる理由を主張、立証せねばなりません。 判決によって遺言の無効が確認されたら、その後に遺言書がないことを前提に、相続人たちが遺産分割協議を進めていきます。
(2)遺言無効確認訴訟で必要な証拠
遺言無効確認訴訟で勝訴するには以下のような証拠が必要です。
・被相続人の生前の医療記録
・被相続人の生前の介護記録
・要介護認定を受けたときの資料
・筆跡鑑定(自筆証書遺言の場合)
→相続が発生したときに遺言書が発見されて、内容や外見が怪しいと感じられたら早めに遺言書の有効性を確定させる必要があります。
相続人の方だけで解決することは難しいので、お早めに弁護士までご相談ください。
6 遺産分割の対象となる財産
(1)遺産分割が必要になるケースと不要なケース
①必要なケース
遺産分割は、法定相続人が相続財産の分配方法を話し合いで決める手続きです。遺産分割を進めるときには、「相続人全員」が参加して「遺産分割協議」を行うのが基本です。分配すべき遺産があって相続人が複数いる場合には、基本的に遺産分割が必要です。
② 不要なケース
遺産分割協議が必要になるのは、遺産相続方法が決まっていないからです。
もし遺言書によって遺産分割方法が指定されていたら遺産分割協議は不要となります。
また相続人がひとりのケースでは、その相続人がすべての遺産を相続するので遺産分割協議が不要です。
遺産がないケースでも、遺産分割協議する必要はありません。
ただし、金融機関によっては相続人全員の署名押印と印鑑証明の提出を求めることもあります。
(2)分割の対象となる財産の範囲
①遺産分割の対象になる財産
現金
預貯金
株式
ゴルフ会員権
不動産
動産
車両
③ 遺産分割の対象にならない財産
祭祀(さいし)財産(仏壇仏具、墓、家系図など)
被相続人の一身専属的な権利義務(扶養請求権及び支払義務や年金、生活保護の受給権など)
死亡保険金(高額な場合には特別受益の持ち戻し計算の対象になる可能性があります)
(3)遺産分割の流れ
①遺産分割の流れ
・遺言書の有無の確認
まずは遺言書がないかどうか調べます。
遺言書によってすべての相続財産についての分配方法が指定されていたら、遺産分割を行う必要がなくなります。
②相続人調査
誰が遺産分割協議に参加すべき法定相続人かを確認するため、相続人調査が必要です。
被相続人の出生から死亡するまでのすべての戸籍謄本や除籍謄本、改正原戸籍謄本を取り寄せましょう。
④ 相続財産調査
次に、残された遺産(相続財産)内容を調べます。
預貯金については金融機関に、株式や債券などは証券会社や発行会社に問い合わせ、不動産については市区町村役場で固定資産課税台帳(名寄せ帳)の開示を受けましょう。
借金などの負債も明らかにしておかないと後に負債を背負わされるおそれがあり、注意が必要です。
郵便物である程度の絞り込みが可能です。
相続人代表の方に転送設定をしておくと便利です。
⑤遺産分割協議
相続人調査と相続財産調査が終わったら、相続人全員が参加して遺産分割協議を行います。
⑥遺産分割調停
遺産分割協議がまとまらない場合、遺産分割調停を行って話し合いを継続します。
⑦遺産分割審判
調停でも意見がまとまらない場合には、遺産分割審判によって裁判官に遺産分割の方法を決めてもらう必要があります。
7 遺産分割を放置した場合に考えられるトラブルとは?
遺産分割協議を放置すると下記のようなトラブルが生じ得ます。
① 相続税が高額になる
相続開始後10ヶ月以内に相続税の申告納税ができないと、延滞税や加算税がかかって相続税が高額になります。
遺産分割協議ができていないからといって相続税を申告しないと不利益があります。遺産分割協議未了の場合、取りあえず期限内に法定相続分に従って申告することも可能ですが、それでは各種の控除を適用できずにやはり相続税が高くなってしまう可能性があります。
②相続不動産を活用できない
遺産の中に不動産がある場合、遺産分割協議をしないと相続人の共有となります。するとスムーズに意思決定できないので活用できない可能性が高くなります。
③預貯金の払い戻しができない
遺産分割協議が成立していない場合、金融機関が預貯金払い戻しに応じてくれないことがあります。
8、遺産分割協議書の重要性
共同相続人が話し合って遺産分割協議が成立したら必ず遺産分割協議書を作成することになります。
遺産分割協議書がないと、銀行預金の払い戻しや不動産の名義変更ができません。
誰がどの遺産を相続するかを特定し、全員が署名押印して適式な方法で作成する必要があります。
不動産登記を移転するには法務局が移転登記を入れられるような形式で遺産分割協議書を作成する必要があります。
また、金融機関によって遺産分割協議書に記載する内容が異なる場合もあります。
そのあたりはやはり弁護士に相談し、出来れば遺産分割協議書の起案だけでも依頼することをおすすめします。
9 お子様がいらっしゃらない場合
今すぐに遺言書を作成してください。
配偶者の方に大きな負担を追わせることになってしまいます
これから説明するとおり1通の遺言書でそのリスクを回避できます。
(1)子どもなし夫婦の法定相続人
①相続人になる人について
子どもなしの場合には、第2順位の親が法定相続人となるので妻と親が相続人です。
子どもも親もいない場合、第3順位の兄弟姉妹と妻が法定相続人となります。
②法定相続割合について
妻が相続する場合の法定相続割合は、以下の通りです。
子どもなしで妻のみ…妻が全部相続する
妻と親…妻に3分の2、親(親が死亡、祖父母が生存なら祖父母)に3分の1
妻と兄弟姉妹…妻に4分の3、兄弟姉妹(兄弟姉妹が死亡していたらおいめい)に4分の1
ちなみに妻と子どもが相続する場合には、妻が2分の1、子どもが2分の1となります。
(2)妻に全財産を残す方法と注意点
①遺言書を作成する
子どもなしの夫婦の場合、妻と親や兄弟姉妹が共同相続人になってしまうので、死後にトラブルが起こる危険性が高くなります。
そのようなとき、妻にすべての財産を残す方法は「遺言」です。
遺言は法定相続に優先するので、遺言書によって「妻にすべての遺産を相続させる」と書いておけば基本的に妻に全部の遺産を受け渡すことが可能となります。
② 親がいる場合は遺留分に注意
親がいる場合には、親に「遺留分」が認められるので注意が必要です。
遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に権利として認められる最低限の遺産取得分です。親と配偶者が相続人になる場合の遺留分は2分の1であり、そこに親の法定相続分をかけ算した割合が親の遺留分となります。たとえば妻と母が相続する場合、母の遺留分は2分の1×3分の1=6分の1です。遺言によって妻に全部の遺産を相続させるには、親の遺留分侵害額請求を阻止しなければなりません。
生前に遺留分放棄させることはできないので、親によく言い含めておくか、妻に絶対受け継がせたい自宅などの資産を先に妻に生前贈与しておくなどの対策が必要です。
子どもなしのご夫婦の場合、夫の死後に妻と親や兄弟姉妹がトラブルになるケースもみられます。
そのようなことになったら親族が心身共に疲弊しますし妻に必要な資産を受け継がせられなくなるおそれも高まります。
残された配偶者の方の生活を守るのも大事な責任だと思います。
まずは遺言の作成を1日でも早く行ってください。
10 相続人の調査方法や、戸籍の読み方について
(1)相続人調査
相続人調査は、遺産分割協議のために行います。
遺産分割協議の結果作成する「遺産分割協議書」は、不動産の名義書換などを行うための重要書類ですが、その前提となるのが遺産分割協議です。
遺産分割協議には「相続人全員」が参加する必要があるため、相続人の範囲を確定しておかないと協議を開始すらできません。
その場にいる相続人だけで相続財産を分け合っても無効ですので、事前に相続人調査を行って「法律によって認められる相続人」を確定しておく必要があります。
なお、遺言書によってすべての遺産の分配方法が決まっていたら、遺産分割協議は不要です。
実は知らない腹違いの子がいたと後で判明すると、遺産分割をやり直すことになってしまいます。気が大きくなって散財した後にそのようなことがないようにしっかりと調査しましょう。
通常は、預金解約や不動産登記移転に戸籍が必要なので、そのようなことは起きません。
箪笥預金だけが遺産などというレアケースでは起こりえます。
(2)戸籍の収集
相続人調査をするときには、被相続人が出生から死亡するまでのすべての戸籍謄本、除籍謄本、改正原戸籍謄本を取得します。
戸籍には被相続人の婚姻や養子縁組、自分や妻の出産、子どもの認知などの事実が載っているので、精査していけばすべての相続関係が詳しく判明するのです。
戸籍には以下のような種類があります。
①戸籍謄本(こせきとうほん)
一般の戸籍謄本です。戸籍内の人が生きている場合、戸籍謄本となります。
②除籍謄本(じょせきとうほん)
戸籍内の人が全員死亡したり抜けて別の戸籍を作ったりすると、その戸籍は「除籍謄本」となります。
③改製原戸籍謄本(かいせいげんこせきとうほん)
戸籍の電子化などの改定によって戸籍が作り直されたとき、古い方の戸籍は改正原戸籍謄本となります。
④戸籍抄本(こせきしょうほん)
戸籍内のひとり分だけの戸籍です。相続人調査ではこちらは取得せず「謄本」を申請します。
(3)戸籍の取り寄せ方法
①戸籍謄本の請求方法
戸籍謄本類は、すべて「市区町村役場」で保管されているので「本籍地」のある役所に申請して取得しましょう。
訪ねて行って申請書を出せば発行してくれますが、遠方の場合などには郵送による申請も可能です。郵便局で「定額小為替」を買って返送用の郵便切手と本人確認書類の写し、申請書を送付したら必要な戸籍謄本を返送してもらえます。
② 戸籍を取り寄せることができる方
戸籍謄本は個人情報なので、申請が認められるのは「相続人となる者(被相続人の配偶者や直系親族、その代理人)」のみです。
弁護士であれば、戸籍謄本、戸籍附票、住民票などすべて職権による申請が可能です。
相続人調査の手続きは思ったより面倒で、途中で戸籍に抜けや漏れが発生することも多く相続人の方たち
の頭を悩ませる相続手続きとなっています。
弁護士に任せてしまえばすべてを弁護士が行うので手間はかかりませんし、相続人関係図を作成するので不動産の名義変更などもスムーズに進みます。
実物を見て頂ければおわかりになると思いますが、戸籍を正しく読んで追っていくのは、慣れていないと本当に骨が折れます。
やってみて「やはり無理」と感じてご依頼頂くケースも多々あります。
11 相続放棄の注意点
(1)相続放棄とは
相続放棄とは、被相続人の財産や負債、権利義務を一切受け継がないことです。相続放棄をすると、その相続人は「初めから相続人でなかった」ことになるので、不動産などの資産も借金などの負債も一切相続しませんし遺産分割協議にも参加しません。保証人の地位も相続せずに済みます。
(2)相続放棄をすべきケース
①明らかに債務超過なケース
明らかに負債の額が資産を上回っていたら、相続人は自分の資産をもって被相続人の負債を支払わねばなりません。
相続債権者に負債関係を支払えなければ自己破産が必要になるケースもあるので、早期に相続放棄すべきです。
②限定承認できない場合
限定承認は相続人全員が共同で申述人になる必要があるので、他の相続人と意見が合わなければ手続きできません。その場合、相続放棄によって相続を免れる必要があります。
ただし、あくまでも負債が大きいと判断される場合です。もらえるものがあるのに慌てて相続放棄する必要はないと考えます。
③遺産相続に関わりたくない
遺産分割協議に参加するのが面倒、遺産に関心がない、他の相続人と折り合いが悪いなどの場合、相続放棄すると関わり合いにならずに済みます。
そういった場合であれば、早期に相続放棄をして知らぬ存ぜぬを決め込む方が得策かもしれません。
(3)相続放棄の注意点
①法定単純承認に注意
相続放棄したいなら「法定単純承認」に注意が必要です。
相続人が相続財産を処分したり隠したり自分のものにしてしまったりすると、相続したものとみなされてしまいます。
このような法定単純承認に該当する可能性のある行為をしてはいけません。
②相続放棄の期限に注意
相続放棄は基本的に「自分のために相続の開始があったことを知ってから3ヶ月以内」に申述する必要があります。
この期限を「熟慮期間」と言います。期限内に相続放棄や限定承認しなかった場合、単純承認したとみなされます。上でも述べましたが本当にあっと言う間に期限がやってきます。すぐに行動に移して下さい。
③撤回できない
いったん相続放棄すると、基本的に撤回できないので慎重に判断しましょう。
(4)相続放棄の方法
相続放棄の手続きをしたいときには、被相続人の最終の住所地の家庭裁判所で「相続放棄の申述」を行います。
その際、以下のような書類が必要です。
・相続放棄申述書
・被相続人の戸籍の附票または住民票の除票
・申述人の戸籍謄本
・被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本など
・収入印紙と連絡用の郵便切手
書類を提出すると裁判所から「相続放棄照会書等」という書類が送られてくるので、必要事項を書いて返送します。すると裁判所から「相続放棄申述受理通知書」が送付されてきます。これで相続放棄の申述が受け付けられたことになります。
弁護士に依頼すれば、相続財産調査や戸籍などの取り寄せ、相続放棄申述書の作成や提出、裁判所のやり取りなど相続放棄に関する手続きを一任できて安心ですし手間も省けます。
12 さいごに
以上、相続でお伝えしたいことを私なりに過不足なく述べてみました。
みなさんの何かのご参考になっているのであれば嬉しい限りです。
お亡くなりになった被相続人の方がどんな想いでいるかを想像してみることが一番大切かもしれません。
相続人全員がそういう想いを持っていれば、私たち弁護士はいらないのかもしれません。
揉めていないから弁護士は不要と言うことでもありませんので、相続問題で何かお悩みであれば、是非一度当事務所の初回無料相談をご利用ください。
この記事の執筆者
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当サイトでは、相続問題にまつわるお悩みに対して、弁護士の視点で解説をしています。また、当事務所にて携わった事案のポイントも定期的に更新しています。地元横須賀で、「迅速な解決」を大切に代理人として事件の解決に向けて取り組んでいます。
初回相談は無料でお受けしておりますので、お悩みの方は、お一人で抱え込まず、ぜひ一度相続に注力する弁護士にご相談ください。
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