遺言書を作成するときに注意すること
目次
近年「終活」などよく聞くようになった影響か、遺言書を残したいという方が増え、当事務所にもそういった方が多く相談にいらっしゃいます。
そういった遺言書を残したいという方に向けて、注意点を述べていきます。
1 遺言書の種類
遺言の中で特に多く使われているものは、自筆証書遺言と公正証書遺言です。
公正証書遺言については、元裁判官など長年にわたり法務に携わってきた公証人が作成するため、自筆証書遺言のように書き方に不備があって無効とされる心配はありません。
自筆証書遺言の場合は、費用もほとんどかからず手軽に作成できる一方、書き方の不備により無効となることも多いので注意が必要です。
ですので、相談にいらっしゃる方には、公正証書遺言を強くおすすめしています。
せっかく遺言書を作成したのに、かえって相続人間の紛争を起こしてしまうと意味がありません。効力に問題のない公正証書遺言を作成すべきといえます。
また、遺言書の作成時に認知症等で意思能力に問題があると、遺言が無効とされる可能性があります。
相続発生後のトラブルを防ぐためにも、意思能力に問題がない時に遺言書を作成するべきでしょう。一概には言えませんが、長谷川認知症スケールの点数が10点を下回る場合には、公正証書遺言であっても無効となる可能性が高いです。
高齢の方でも元気なうちは、遺言書の作成などをつい後回しにしてしまいがちですが、将来、相続人になる子どもたちにとっては、相続のことは尋ねづらいものでもあります。なので、将来の相続トラブルが生じないように、できるだけ元気なうちに、後々、相続人が困らないように配慮するのも大切です。
2 自筆証書遺言の書き方の注意点
以下の注意点があります。
① 全文自筆で書く(財産目録を除く)
→他の人に代筆してもらった部分があるケースや、パソコンで作成した遺言は無効となります。
② 作成日を記載する
→遺言に作成年月日を特定できる形で記載する必要があります。令和〇〇年〇月吉日などは作成日が特定できず無効となります。
③ 署名・押印をする
→遺言には必ず署名・押印が必要です。
④ 訂正の方式を守る
→訂正したい箇所に二重線等を引き、二重線の上に押印し、その横に正しい文字を記載します。加えて、遺言書の末尾などに、「〇行目〇文字削除〇文字追加」と自書で追記して署名をする必要があります。自筆証書遺言で加除変更が民法で定める方式を満たしていない場合、遺言書の効力自体は有効ではあるものの、加除変更がなされなかったものとして扱われます。
訂正の方式も厳格なので、遺言の内容を訂正したい場合は最初から書き直す方が良いです。
以上のように厳格なルールの下に作成する必要があり、実は多くの人がこのことを理解せずに自己流で遺言書を作成してしまっています。
3 遺言を作成すべき人
① 法定相続分より多い又は少ない財産を相続させたい相続人がいる
→この場合遺言書作成をしなければ法定相続分での相続になるので当然と言えます。
② 内縁の妻など法定相続人以外の者に財産を相続させたい
→内縁の妻、長男の妻、養子縁組をしていない再婚相手の連れ子、お世話になった友人など法定相続人でない者に相続権はないので、遺言で財産を相続させる必要があります。
③ 行方不明の相続人がいる場合
→遺言がない場合は、相続人全員で遺産分割協議を行う必要があり、一部の相続人が欠けるとその遺産分割協議は無効となってしまいます。こういった場合は裁判所の手続きを利用するほかありません。そのため、将来、相続人となる者の中で行方不明の者がいる場合は、遺言を作成しておいた方が良いでしょう。
④ 相続人が不仲の場合や相続人の数が多い場合
→遺言がないと、相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。相続人同士が不仲だったり、相続人の数が多かったりすると、誰がどの財産を相続するのかなど話がまとまらず遺産分割協議にかなりの時間と手間を要する危険性があります。そのため、この場合は遺言を作成すると良いでしょう。
⑤ 事業の後継者に特定の財産を相続させたい場合
→相続人同士で遺産分割協議を行う場合は、事業に必要な財産(資金、設備、株式等)が後継者に渡らない可能性があります。そのため、事業に必要な財産を後継者に引き継がせたい場合は、遺言を作成しておくべきでしょう。
4 特別受益や遺留分への配慮をする
相続の場面で、よく問題となるのが特別受益や遺留分です。
特別受益とは、相続人の中に、被相続人から遺贈や多額の生前贈与を受けた人がいた場合、他の相続人との間に不公平が生じるため、生前贈与等を遺産に持ち戻して、各相続人への相続財産額を決めるという制度です。
また、遺留分は兄弟姉妹以外の法定相続人に認められる最低限の相続分のことをいいます。
こういった「最低限」すら相続させない内容の遺言は、疎んじられた相続人に感情的なしこりを残し、徒に相続人間の紛争を招くのでおすすめできません。
5 遺言執行者を指定しておく
遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために必要な手続きを行う人のことです。遺言執行者は相続人でも第三者でもかまいません。
相続人同士の仲が悪かったり、相続人らがそれぞれ遠くに住んでいたりする場合は、例えば不動産の名義変更や預貯金の解約払戻手続きの書類をそろえるだけでもかなりの手間です。遺言で遺言執行者を指定しておくと、相続人の代わりに遺言執行者が遺言を執行してくれるので、遺言の執行がスムーズになります。特に、相続人同士が仲の悪い場合は弁護士等の専門家を遺言執行者にしておくと、相続人の協力が得られやすくなるので遺言の執行もスムーズに進みます。
また、遺言によって、子の認知、相続人の廃除や廃除の取消しを行いたい場合は遺言執行者しか手続きすることが出来ません。
6 弁護士に遺言書の作成を依頼するメリットや費用
弁護士などの専門家に遺言の作成を依頼するメリットとしては、遺言を作成する人の意図をくみ取り、記載内容の不備がない遺言を作成するほか、普段あまり馴染みのない特別受益や遺留分についても考慮した上で遺言を作ってもらえるという点があります。
特に、何が特別受益に該当するのか判断が難しい、遺留分が何か良く分からない、という場合には専門家に相談しておくと、相続トラブルを防ぐ手助けにもなり得ます。
また、遺産の中に株式や不動産がある場合は、その評価方法や分け方についてもアドバイスがもらえます。
さらに、専門家に相談することで、相続税や贈与税対策のために生前にどのようなことをしておくべきかなどの相談に乗ってもらえる場合もありますし、遺言の作成者が認知症等で意思能力に問題がある場合は、作成した遺言は有効となり得るかなど専門的な観点からの指摘も受けられるでしょう。
遺言書が無効となる場合
遺言書の効力が失われるケースとしては下記のような場合があります。
(1)遺言が無効な場合
特に自筆証書遺言は、公正証書遺言や秘密証書遺言に比べて法律的に無効となるケースが見受けられます。自筆証書遺言は誤った書き方がなされている場合が多いためです。
たとえば、「本文がパソコンで作成されている」「遺言書に日付が入っていない」「署名・捺印がない」「遺言書の修正方法が間違っている」といった場合です。
(2)法定相続人全員が合意した場合
遺言書があると、基本的には遺言書通りに遺産が分配されますが、その内容は必ず守らねばならないわけではありません。
特定の相続人の相続分を多くされていたり特定の相続人に特定の相続財産を相続させる遺言書があったりする場合において、相続人全員が合意すれば、遺言書と異なる内容で遺産相続することも可能です。
遺言書通りに遺産相続を行わなくても罰則などはありません。
(3)遺留分侵害請求が行われた場合
遺言が遺留分を侵害している場合、遺言書の効力は一部失われる可能性が高くなります。
遺留分を侵害された相続人が遺留分減殺請求権を行使すると、その分は遺留分権利者(相続人)に返さねばなりません。
遺留分のない兄弟姉妹以外の法定相続人の遺留分を無視した遺言書を作成すると、後にトラブルの元になる可能性があります。
ただ、あくまでも、遺留分減殺請求権は、形成権であり、遺留分を侵害されたものが行使しないのであれば、遺言書の内容通りの遺産分割なります。
専門家に依頼してトラブルを防ぐ
遺言書作成のための弁護士費用については、当事務所では一般的な内容であれば5から10万円となっております。もし将来、相続トラブルが生じてしまった際に相続人らが負担する弁護士費用に比べるとはるかに安価であると言えます。
そのため、費用がかかったとしても、確実に自分の意思通りに財産を相続させ、将来の相続トラブルを防ぐことによって相続人らの負担を軽くすることができるので、専門家に遺言書を作成してもらうメリットは大きいです。
また、弁護士といってもそれぞれに得意分野を持っていますので、遺言書の作成であれば、相続案件を中心に取り扱う事務所が相続トラブルを熟知しているため最適でしょう。
まずは当事務所の初回無料相談をお気軽にご利用ください。
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当サイトでは、相続問題にまつわるお悩みに対して、弁護士の視点で解説をしています。また、当事務所にて携わった事案のポイントも定期的に更新しています。地元横須賀で、「迅速な解決」を大切に代理人として事件の解決に向けて取り組んでいます。
初回相談は無料でお受けしておりますので、お悩みの方は、お一人で抱え込まず、ぜひ一度相続に注力する弁護士にご相談ください。
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