父親が亡くなった際に母が認知症のときに相続手続はどうなるのか
父親が亡くなり相続手続を進めたいのに、母親が高齢で認知症にかかっているケースでは遺産分割はどうなるでしょうか。
以下、説明していきます。
1 認知症の人が相続人の場合
認知症の相続人がいる場合、認知症の程度によっては、成年後見制度を利用すべき場合があります。
家族が亡くなって遺産分割を行う際には、相続人全員の同意が必要です。
母親が高齢で認知症にかかっていたとしても、母親を無視して勝手に遺産分割を進めることはできません。
認知症の相続人がいる場合、その人の意思能力の有無によって手続が異なります。
意思能力とは、法律行為の結果を判断することができる能力のことです。
ある相続人が認知症であっても意思能力があれば、その相続人は遺産分割協議に参加できます。
これに対して、認知症によって意思能力がなくなってしまっている場合には、遺産分割協議は出来ず、成年後見人を選任して以後遺産分割協議を成年後見人にしてもらう必要があります。
2 成年後見制度とは
成年後見制度とは、判断能力の低下した本人の財産・権利を保護するため、法律行為に関するサポート役を選任する制度です。
(1)種類
①法定後見と②任意後見があります。
①法定後見
民法で定められた成年後見制度です。実際に判断能力が低下するに至った段階で、家庭裁判所の審判によって開始されます。
判断能力の低下の程度に応じて、「成年後見」「保佐」「補助」の3種類が用意されています。
②任意後見
契約に基づく成年後見制度です。判断能力が低下する前の段階で任意後見契約を締結し、判断能力が低下した段階で契約に基づいて開始されます。
任意後見人を本人が選べる点や、任意後見人の権限内容を柔軟に決めることができる点などが特徴です。
相続人がすでに認知症によって意思能力を欠いている場合は、法定後見の一つである成年後見の開始を家庭裁判所に申し立てることになります。
(2)成年後見人には誰が就任するのか?
成年後見人(保佐人・補助人・任意後見人も同様)になれるのは、以下の欠格事由に該当しない人です(民法847条、876条の2第2項、876条の7第2項)。
- 未成年者
- 家庭裁判所で免ぜられた法定代理人・保佐人・補助人
- 破産者
- 本人に対して訴訟をしている者・した者、およびその配偶者・直系血族
- 行方の知れない者
成年後見人に就任する人は、家庭裁判所が審判によって選任します。
成年後見の開始を申し立てる際、成年後見人になる人を推薦することができますが、そのとおりに選任されるとは限りません。
実際には本人の親族のほか、弁護士などの専門家が成年後見人に選任されるケースが多くなっています。
(3)成年後見を利用する際の手続き
成年後見の利用が必要となった場合、本人の住所地の家庭裁判所に対して後見開始の申し立てを行います。
後見開始の申し立てができるのは、本人のほか、配偶者や四親等内の親族などです。
3 成年後見制度のリスクと予防策
成年後見人は、本人に代わって法律行為をする包括的な代理権を有します。
ただ、成年後見人が、本人の代理権があることを悪用して、本人の財産を横領してしまうことも起こっています。
信頼できる専門職に後見人等への就任を依頼すれば、悪事を行えば資格喪失もあるため、横領等のリスクを低く抑えることができます。
他には、家庭裁判所に後見監督人の選任を請求することも可能です。
本人・親族・成年後見人は、家庭裁判所に対して後見監督人の選任を請求することができます(民法第849条)。
後見監督人は成年後見人の職務を監督するため、選任されれば成年後見人による横領の抑止につながるでしょう。
また、家庭裁判所を通じて後見制度支援信託を利用すると、通常使用しない金銭を信託銀行等に信託することができます。
成年後見人は勝手に大きな財産を処分することができなくなるため、成年後見人による横領のリスクを抑えられます。
以上、父親が亡くなった際に母が認知症になっているときの相続手続について述べてきました。
実際には、その事案であったり、お母様の状態によって話が変わってきます。
まずは専門家である弁護士に相談しましょう。
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この記事の執筆者
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当サイトでは、相続問題にまつわるお悩みに対して、弁護士の視点で解説をしています。また、当事務所にて携わった事案のポイントも定期的に更新しています。地元横須賀で、「迅速な解決」を大切に代理人として事件の解決に向けて取り組んでいます。
初回相談は無料でお受けしておりますので、お悩みの方は、お一人で抱え込まず、ぜひ一度相続に注力する弁護士にご相談ください。
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