葬儀が終わってから被相続人の借金が発覚してからも相続放棄は出来るのか?

被相続人の方が亡くなり、ようやく葬儀が終わったら、被相続人の方に借金があることが判明した。そういった相談がたまにいらっしゃいます。

 

ここで法律的な問題が生じるのは、被相続人の方の預金を引き出し葬儀をしてしまった場合です。

 

そのような場合に相続放棄できるのでしょうか。

 

今回はこのような問題について説明していきます。

 

今回の問題は、まず、葬儀費を被相続人の方の預貯金から支出ている点です。

 

基本的に、被相続人の財産を「処分」することは、民法921条1号が規定する単純承認事由になってしまいます。

 

もっとも、今回のような場合に当然に単純承認になるかというとそうではありません。ケースバイケースとなります。

 

事案ごとに裁判所で判断していくことになります。

支出した金額や最低限の葬儀か盛大にやったものかなど事実を確認していくことなるかと

思います。

 

次の問題点としては、債権者から請求されているのがあなたの被相続人の死後、3か月以上経過している場合です。

 

相続放棄の申述については、「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3か月以内でないとすることができない、と定められています。

 

この点については、最高裁判所昭和59年4月27日判決が、熟慮期間は原則として相続人が相続開始の原因となった事実、及び自己が法律上の相続人となった事実を知った時から起算すべき、とした上で、3か月以内に相続放棄をしなかったのが、「被相続人に相続財産が全く存在しないと信じたためであり、かつ、被相続人の生活歴、被相続人と相続人との間の交際状態その他諸般の状況からみて当該相続人に対し相続財産の有無の調査を期待することが著しく困難な事情があつて、相続人において右のように信ずるについて相当な理由があると認められるときには、相続人が前記の各事実を知つた時から熟慮期間を起算すべきであるとすることは相当でないものというべきであり、熟慮期間は相続人が相続財産の全部又は一部の存在を認識した時又は通常これを認識しうべき時から起算すべきものと解するのが相当」との判断をしています。

 

以上を前提にすれば、債務の存在を知った日を起算点とするとの判断になる可能性が高いといえます。

ただ、実際にはやはりケースバイケースで債権者が争えば、裁判所での判断を強いられることになりますので注意してください。

 

以上、葬儀費を被相続人の財産から支出してしまった場合に相続放棄ができるかについて述べてきました。

 

このような事案では絶対に大丈夫、とはなかなか言えません。

 

そうであるとすれば、被相続人の方の財産関係すべてが判明するまで、相続人の方が葬儀費用を支出したほうが無難と言えます。

 

このような状況になってしまった場合、すぐに専門家である弁護士に相談することをお勧めします。

相続放棄が認められず、多額の債務を負うことがないよう専門家のアドバイスを得ましょう。

是非当事務所の初回無料相談をご利用ください。

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この記事の執筆者

島武広
島武広島法律事務所 代表弁護士(神奈川県弁護士会所属)
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