認知症の人が残した公正証書遺言を無効にできるか
先に答えを言ってしまうと無効にできる場合があります。
実際、私が担当した事件において、和解にはなりましたが、遺言が無効であることを前提にした条件で解決となったものがあります。
その事件は、公正証書遺言作成時に、家庭裁判所が後見人を付けていたという幸運な事案でした。
実際は、公正証書遺言を無効にすることはそれほど簡単ではありません。
しかし、出来ることもある、というのが現状です。
無効になる場合
公正証書遺言は、公証役場で作成した遺言です。
公証人は、遺言者の意思を確認し、2人以上の証人の立ち会いのもと作成します。
また、公証人は、裁判官、検察官のOBが就任するので、ある意味同業者といえます。
その同業者が作成した遺言を無効にすることを裁判官はあまり考えないというのが現状です。
しかし、認知症などで遺言能力がないにもかかわらず公正証書遺言が作成されてしまうこともあります。
そういった場合には公正証書であったとしても無効になります。
公正証書遺言の効力を争う場合、無効と主張する側から遺言無効確認の調停や民事訴訟を申し立てることになります。
遺言書の立証するには。
- 介護施設の介護記録や医療機関の療養・看護記録
- 介護保険の認定調査票
を取り寄せましょう。①についてはあまり協力的ではない施設多いため、場合によっては弁護士照会、調停や訴訟での調査嘱託を利用しましょう。誰もが知っているような大手施設が非協力的なのは非常に驚きましたが、それが介護施設の現状です。②は問題なく取得できます。
いずれも保管期間があるので、すぐに請求しましょう。
決め手になるのは、遺言作成時付近の長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)になります。
これは年齢、日付、居場所などの質問、簡単な計算問題や暗記テストなどを行うもので、回答を点数化して認知能力を検査するものです。30点満点で20点以下だと認知症の疑いがあるものとされています。
もちろんHDS-Rの点数だけで判断する訳ではありませんが、本人が意思疎通をどの程度できたのか、当時の遺言能力と比べて遺言の内容は複雑か単純か、遺言者のそれまでの言動に照らして遺言の内容が不自然ではないかなど、様々な要素を総合的に考慮して判断されます。しかし、HDS-Rの点数が判断要素の一つであることは間違いありません。判例を見ても大きな要素となっていることがわかります。
具体的には1桁の点数で低ければ低いほど良い、というのが裁判所の考えのようです。
以上、認知症の人が残した公正証書遺言を無効にできるかについて述べてきました。
出来なくはない、ただ、相応の覚悟が必要であり、客観的な証拠が必要になる
ということになります。
一般の方が判断できるような問題ではないといえますので、是非当事務所の初回無料相談をご利用ください。
過去の担当事案からの経験などから適切なアドバイスをさせて頂きます。
この記事の執筆者
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当サイトでは、相続問題にまつわるお悩みに対して、弁護士の視点で解説をしています。また、当事務所にて携わった事案のポイントも定期的に更新しています。地元横須賀で、「迅速な解決」を大切に代理人として事件の解決に向けて取り組んでいます。
初回相談は無料でお受けしておりますので、お悩みの方は、お一人で抱え込まず、ぜひ一度相続に注力する弁護士にご相談ください。
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