多人数の相続人がいる場合の遺産分割

多人数の相続人がいる場合、色々と問題になってくることがあります。

そういった多人数の相続で気を付けたいポイントをここでは説明していきます。

 

1 遺産分割協議の流れ

 

まずは、一般的な遺産分割の流れを説明していきます。

 

相続人の調査

最初にやることは、誰が相続人かを確定させることです。

ここをしないで手続を進めてしまうと、以後他に相続人がいた場合、手続きは振出しに戻ってしまいます。

金融機関等は、すべての戸籍を確認しないと解約などの手続に応じてくれません。

まずは、戸籍謄本類・戸籍の附票を収集し、相続人全員を特定しましょう。

 

相続財産の確定

誰が相続人かを確定したら、次は分ける相続財産を確定させましょう。

後から重要な遺産のあることが判明すると「話が違う」と手続が振出しに戻ることもあります。

 

不動産であれば、固定資産税の請求が来るのでそこまで待てば概ね判明しますが、念のため居住する市町村に名寄帳を取り寄せるなどしましょう。

預金については、生前取引のあった金融機関に照会をかけましょう。

横須賀、三浦、葉山、逗子の方の場合、横浜銀行、かながわ信金、湘南信金を利用する方が圧倒的に多いです。また、三浦の方を中心にJAも多くいらっしゃいます。

横須賀の人であれば横須賀中央駅や久里浜駅、三浦の方であれば三浦海岸駅や三崎口駅、逗子・葉山の人であれば逗子駅にある金融機関は念のため調査したほうが良いといえます。

当然ゆうちょ銀行も忘れずに調査しましょう。

 

株式の場合は証券会社、投資の場合は証券会社や信託銀行を調査しましょう。

その他財産については、預金通帳や家にある資料を探して調査しましょう。

 

遺産分割協議

相続人と相続財産が確定したら、どのように分けるかを話し合うことになります。

この点については、通常

遺言がある場合、それに従い、遺留分を侵害するかどうかが問題となり

遺言がない場合、法定相続分とおりに分割することが圧倒的多数と言えます。

あまり問題になりませんが、寄与分、特別受益、使途不明金についても問題になることがありますが、このような主張が出ると大半は裁判所での調停・審判へと手続が進むこととなります。

 

遺産分割協議書の作成

遺産分割の話し合いがまとまると遺産分割協議書を作成することになります。

不動産登記移転や預金の解約などに足りる内容になっていないとなりません。

相続人同士で話し合いが済んでいるのであれば、弁護士に依頼してその内容を確実にすることをおすすめします。

争いのない内容を遺産分割協議にするのであれば、法律事務所毎に差異はありますが、数万円から高くても10万円程度で依頼することができる場合が多いです。

いい加減な内容で紛争化することを考えれば、弁護士に依頼して憂いなくか解決すべきといえます。

 

遺産の分配

遺産分割協議書に従って、預金の解約、不動産の名義変更、その他遺産の分配のための手続を行います。

 

2 相続人が多数いる場合の遺産分割の注意点

相続人が多数にのぼるケースとしては、①兄弟姉妹や甥・姪が相続人になる場合、②二次相続や三次相続が発生している場合などがあります。

 

①兄弟姉妹や甥・姪が相続人になる場合

被相続人に子どもがおらず、親がすでに亡くなっている場合には、兄弟姉妹に相続権があります。

そして、兄弟姉妹が亡くなっていれば、その甥・姪が代襲相続します。

兄弟姉妹や甥・姪が相続人になる場合には、相続人が多数にのぼることが少なくありません。

 

②二次相続や三次相続が発生している場合

また、先代の相続の際に遺産分割協議が行われておらず、遺産の名義が先代のままとなっている場合には、先代の相続(一次相続)と今回の相続(二次相続)の両方について遺産分割を行う必要があります。

一次相続の相続人が亡くなっていれば、その相続人が権利を引き継ぎます。

そのため、遺産分割に関与する相続人が多数にのぼることがあるのです。

 

相続人が多数いる場合には、相続人の特定、住所の調査、全員の意見の集約に多大な手間や困難を伴うことが想定されます。

そのため、遺産分割をなかなか進められずに苦慮される方が数多くいらっしゃいます。

また、大勢いる相続人の中に行方不明や音信不通の相続人、認知症の相続人、未成年者の相続人がいる場合には、遺産分割の前に別途法的な手続が必要となるため、より複雑な事案となります。

 

特に、多人数の相続の場合、手続中に相続人の方がお亡くなりになり、更に相続人の人数が増えていくことが一番厄介となります。

その都度戸籍を再調査して、誰が相続人となるかを確定し続けないとなりません。

 

3 多人数の相続手続の進め方

多人数の相手方一人一人に直接会って交渉するのは得策とは言えません。

まずは、一斉に手紙を郵送して遺産分割への協力を求めることから始めましょう。

 

その際、多人数の相続人がいること、迅速に手続をしないとどんどん相続人が変わり、いつまでも解決できないことを説明しましょう。

相続人関係図を添付することも忘れないようにしましょう。

希望者には戸籍一式の写しも送りましょう。

 

また、不信感を持たれないために、遺産目録と添付する資料はしっかりとしたもの、裁判所で求められるレベルの物を準備するべきでしょう。

情報を小出しにすることは、相手に不信感を抱かせることになります。

 

この段階で大半の方は協力してくれるはずです。

ある程度協力してくれる人、協力を拒む人、連絡をしてくれない人に分かれます。

 

そして、この段階で、協力してくれる人に遺産分割協議証明書を作成して、署名押印及び印鑑登録証明書の差し入れをすることをおすすめします。

 

遺産分割では、相続人全員が1通の書面に署名・押印する形の遺産分割協議書を取り交わすのが通常ですが、相続人が多数いる場合には、遺産分割協議書の取り交わしには膨大な時間と手間がかかってしまうことが多いです。

郵送で遺産分割協議書のやり取りをすると、相続人の1人に送って署名・押印のうえ返送してもらい、また次の相続人に送るという手順を繰り返すことになるためです。

 

そこで、相続人が多数いる場合には、遺産分割協議証明書を活用することが推奨されます。

遺産分割協議証明書とは、遺産分割協議で取り決めた内容に間違いがないことを、各相続人が証明する書面のことを言います。

遺産分割協議証明書は、同じ内容の書面を人数分作成し、各相続人が署名・押印する形のものです。

同じ内容の遺産分割協議証明書を各相続人に一斉に郵送し、署名・押印して印鑑登録証明書と一緒に返送してもらうことで取り付けます。

遺産分割協議証明書は、取り付けに時間と手間を省くことができますし、相続人全員の分が揃えば、遺産分割協議書と同じ効力があります。

 

多人数の相続人全員が協力してくれることはほぼ皆無であり、協力してくれる人全員から遺産分割協議証明書を取得できたら、協力してくれない人と連絡をしてくれない人に対して、再度書面を送りましょう。

その際、すでに何人が先日の提示に合意し書面を作成していることを知らせ、このまま協力してくれない場合、それらの人から協力してくれない人、連絡をしてくれない人に対して調停を申し立てることになることを伝えましょう。

その際、いつまで待つかを明示しましょう。

 

その際、どこの裁判所に申し立てるかをよく考えましょう。

相手方となる相続人の管轄する裁判所であれば、どこでも申し立てることができます。

戦略上非常に重要なこととなりますので、慎重に決定し、書面にも、調停となれば○○家庭裁判所に申し立てることとなり、1,2か月に一度その裁判所に来てもらうことになる、と記載しましょう。

その裁判所が強硬に反対している人から飛行機や新幹線の距離にある裁判所であれば、そのことだけで諦める人も出てくるでしょう。

 

遺産目録からして、あなたの法定相続分は〇分の1であり、その価額は△△円となります。

それでも、調停をするかどうか再考してほしいと伝えましょう。

その段階で何人かは諦めるはずです。

 

以上、多人数の相続について述べてきました。

上記のことは、遺産分割協議で非常に役に立つことかと思いますが、実際はケースごとにやるべきこと、してはいけないことは変わってきます。

そういった状況であれば、是非当事務所の初回無料相談をご利用ください。

多人数の相続を解決するに必要な実践的なアドバイスをさせていただきます。

 

 

この記事の執筆者

島武広
島武広島法律事務所 代表弁護士(神奈川県弁護士会所属)
当サイトでは、相続問題にまつわるお悩みに対して、弁護士の視点で解説をしています。また、当事務所にて携わった事案のポイントも定期的に更新しています。地元横須賀で、「迅速な解決」を大切に代理人として事件の解決に向けて取り組んでいます。

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