遺言の無効を主張する場合

被相続人の方が残された遺言があるものの、遺言作成日にはそのような遺言を残せるような状態にはなかったはず。

そのような場合には遺言無効を主張する方法があります。

他方、被相続人の方が遺言を作成する状態にはあったものの、内容に納得できないという場合はなかなかその効力を否定することは難しいのが一般的と言えます。

有効な遺言を作成するためには、遺言能力が必要であり、遺言能力のない状態で作成された遺言は、無効となります。

認知症を発症していたら必ず遺言は無効になるのか

実は、認知症に罹患している=遺言能力を欠いていたと即座になるわけではありません。

認知症患者であっても、遺言当時、遺言内容を理解していれば、遺言能力は認められることもあるのです。

 

遺言能力の有無はどうやって判断されるのか

過去の裁判例においても、各事例事に様々な事情を考慮して判断されており、一概には言えないのですが概ね下記の事項を中心に判断していきます。

①認知症や精神疾患の程度の軽重

②遺言の内容

③遺言内容についての動機の有無

 

遺言を無効とするに足りる証拠を集める

例えば、認知症を罹患しているのであれば、遺言作成当時の病院のカルテを取り寄せることをお薦めします。

認知症患者の方には殆どの場合、病院において改訂長谷川式簡易知能評価スケール(長谷川式スケール)と呼ばれる検査を受けていらっしゃいます。長谷川式スケールは、どちらかという簡易式検査に分類されますが、裁判例では多くの場合において、この検査結果が遺言能力有無の判断の際に重要な判断要素とされています。

長谷川式スケールは30点満点となっており、一桁であれば殆どの場合には遺言能力が否定され、10点程度でも大凡半数くらいの割合で遺言能力が否定されています。

長谷川式スケール以外の判断資料としては、次のようなものがあります。

・医師による診断書・鑑定書・意見書等

・CT検査・MRI検査等の画像

・要介護認定判断のための調査結果

・介護施設における介護記録等

・本人が当時記載した物

・遺言当時の様子を撮影した動画、録音データなど

 

遺言の有効性の争い方

遺言無効の場合、遺言の有効・無効により大きく相続できる内容に差異が生じるため、基本的には話合いで解決出来ることは殆どありません。

日本の司法においては、遺言無効も調停前置主義が採用されているため、まずは調停を申し立てる必要があるのですが、調停で合意出来ることも多くないと言えます。

遺言が有効か無効のどちらか裁判を提起して裁判官の心証を開示した上で、初めて和解の話合いが進むことが多いと言えます。

遺言の無効を主張する側、有効を主張する側双方共に、遺言無効裁判が提起されることを前提としてある程度長期化することを想定する必要があります。

 

弁護士への依頼は必須

遺言の無効・有効を争うためには、適切な主張を適切な証拠に基づいて行う必要があります。基本的に有効か無効かのどちらかしかないため、その主張・立証に失敗することは即自らに不利な結果を招くこととなります。

昨今の裁判では、代理人を付けない本人訴訟においても、書面主義を貫く傾向にあり、裁判所は助け船を出さずに「弁護士を付けないと不利な結果になる」という警告のみ与えて、提出されている書面のみで判断していきます。

遺言の無効・有効は、法律的な判断のため相続に注力する弁護士に依頼すること無しで意図する結果を実現することは難しいと言えます。

そういった意味でも弁護士に依頼することで対象となる遺言の効力について無効・有効を主張していく必要があるのです。

 

まずは当事務所の初回無料法律相談をお気軽にご利用頂き、当該遺言の効力についてアドバイスを受けてはいかがでしょうか。きっと得るものがあるはずです。

この記事の執筆者

島武広
島武広島法律事務所 代表弁護士(神奈川県弁護士会所属)
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