葬儀費用を遺産から出してもよいのか

通夜、告別式、火葬等にかかる費用、いわゆる葬儀費用を遺産から支出することはできるでしょうか。

一番簡単なのは、すべての相続人が同意しているのあれば、何の問題もなく支出できます。

よくご相談いただくのは、相続人の一人(亡くなった被相続人の方を一番面倒をみていた人のことがおおいです)がすべて決めてしまい、後から同意を求めるケースです。

大抵の場合、本丸である遺産分割協議も拗れているため、なかなか難しいことが多いです。

そんな葬儀費用についてここでは説明していきます。

 

まず、葬儀費用は誰が負担するべきでしょうか。

実は、この点については裁判例も分かれているのです。代表的な見解としては

 

  • 喪主が負担
  • 相続人もしくは相続財産が負担
  • 慣習や条理で決定

 

ものがあります。

喪主だけに費用を負担させるのは不公平ともいえますし、最終的な決定権は喪主にあるともいえます。

慣習や条理といっても、昨今そういったものが残っている地域も少なくなっているでしょう。

相続人と相続財産から出すと決めてくれれば、このような争いはなくなりますが現状そうなっていません。

ケースによっては、一番介護してきて、一番葬儀でも骨を折った相続人が一人で負担を強いられることもありうるのです。

ただ、相続財産として残った預貯金は、法律的には法定相続分に分割されて各相続人に帰属するので、他の相続人に断りもなく、預金を勝手に引き出してしまうことは許されないとも考えられます。

 

この点について争いになると、葬儀費用の負担を遺産分割の手続で扱うことが出来ず、別に民事訴訟手続で解決する必要があります。

個人的には、なんともと思います。

 

裁判例でも

  • 喪主が負担すべきとしたもの(東京地方裁判所平成19年7月27日判決、名古屋高等裁判所平成24年3月29日判決、東京地方裁判所平成18年9月22日判決)

 

  • 相続人または相続財産が葬儀費用を負担すべきとしたもの(東京高等裁判所平成23年9月14日判決、東京地方裁判所平成17年7月20日判決、東京地方裁判所平成20年4月25日判決)

 

に分かれています。

 実際には、その事案ごとに事実を確認して判断しているようです。

 要するに、やってみないとわからないということになりそうです。

 

以上、葬儀費用を遺産から出してよいかについて説明してきました。

実際、遺産分割協議が拗れていても、この点について双方当然のことと相続財産から差し引くことを認めるケースは多いです。

しかし、一定数、拒む人もおり、その場合に何を優先して、どこまで主張するかはとても難しい問題です。

葬儀費用を遺産から出すかどうかでお悩みなら専門家である弁護士に相談すべきです。

是非当事務所の初回無料相談をご利用ください。

事案に即した的確なアドバイスをさせていただきます。

この記事の執筆者

島武広
島武広島法律事務所 代表弁護士(神奈川県弁護士会所属)
当サイトでは、相続問題にまつわるお悩みに対して、弁護士の視点で解説をしています。また、当事務所にて携わった事案のポイントも定期的に更新しています。地元横須賀で、「迅速な解決」を大切に代理人として事件の解決に向けて取り組んでいます。

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