絶縁中の兄弟姉妹との遺産分割

親が亡くなると相続が発生し、子どもは親の相続人として相続手続きをしなければなりません。しかし、さまざまな理由から子ども同士が絶縁状態にあるとなかなかうまく事は進みません。

 

そのような場合、調停、審判と裁判所での手続を用いざるを得ないことも多いです。

 

そのような絶縁中の兄弟姉妹との遺産分割について説明していきます。

 

1 相続人全員の同意が必要

 

遺産分割を行うためには、相続人全員の同意が必要です。

 

それは絶縁中の兄弟姉妹でも同じです。

 

絶縁中だろうと話し合いを進めていかなければなりません。相続人全員の同意がない状態で行った遺産分割協議は無効になります。

 

2 絶縁中の兄弟姉妹に親の遺産を相続させない方法

 

以下のような方法により、親が亡くなったときに、絶縁している兄弟姉妹に親の遺産を相続させないようにできる可能性があります。

 

ただ、あくまでも被相続人である親御さんが、絶縁中の子どもには遺産を残したくないと考えることが必要です。

 

① 遺言書の作成

 

遺言書がある場合、相続人による遺産分割協議よりも原則として遺言書の内容が優先されます。

 

ただし、法定相続人である子どもには、最低限の遺産の取得分である遺留分が保障されていますので、遺留分侵害額請求(民法1046条)をされる可能性があります。

 

② 相続人廃除

 

相続人廃除(民法892条)とは、一定の事情がある相続人の相続権を奪うことができる制度です。以下のような事情がある場合、被相続人が生前のうちに遺言または家庭裁判所への申立てをすることで、当該相続人の相続権を奪うことができます。

 

被相続人に対して虐待をしたとき

 

被相続人に重大な侮辱を加えたとき

 

その他著しい非行があったとき

 

ただし、相続人廃除された相続人に子どもや孫がいる場合には、代襲相続により相続権が引き継がれますので注意が必要です。

 

③ 相続欠格

 

相続欠格(民法891条)とは、一定の事由に該当する相続人の相続権が法律上当然に奪われる制度です。以下の相続欠格事由に該当する相続人は、遺留分も含めて一切遺産を相続できなくなります。

 

被相続人や他の相続人を殺害した、もしくは殺害しようとした

 

被相続人が殺害されたことを知りながらそれを告発しなかった

 

詐欺や脅迫により遺言を妨げた

 

遺言書を破棄、偽造、隠匿した

 

前述した相続人廃除は、被相続人による申立てなどの手続きが必要でしたが、相続欠格ではそのような手続きが不要で、当然に相続権が奪われます。

 

ただし、相続人廃除と同様に、相続欠格により相続権が失われたとしても、当該相続人に子どもや孫がいる場合には、代襲相続により相続権が引き継がれますので注意が必要です。

 

以上では、①の遺言はあり得ますが、②③は極限的な場合にのみ適用され現実的な方法とはいえません。

 

3 絶縁中の相続人との間で起こり得る相続紛争

 

絶縁している相続人がいる場合、以下のような相続に関する紛争が生じる可能性があります。

 

遺産の割合でもめる

割合で揉めることは十分に想定され、そうなると法定相続分とおり以外の解決は非常に難しくなります。

 

遺産を勝手に処分される

遺産分割協議がまとまらない間に勝手に遺産を処分されてしまうリスクが生じます。

 

不動産でも、自己の相続持分を勝手に第三者に処分することもあります。

 

そのような不動産を買い取るのは曰く付きの業者が多く、余計に混乱してしまう可能性があります。

 

手続が長期化する

遺産分割について話し合いで解決できないときは、遺産分割調停または審判によって解決を図ることになります。しかし、このような法的手続きが必要になると、相続人同士の話し合いによる遺産分割よりも解決までに時間と労力がかかってしまいます。

 

4 絶縁中の相続人との相続手続きの進め方

 

では、絶縁中の相続人がいる場合、どのように相続手続きを進めていけばよいのでしょうか。

 

①遺産分割協議

まずは、遺産分割についての話し合いを提案しましょう。

 

絶縁中でも遺産が欲しければ話し合いに応じます。

 

ただ、絶縁中ですから意見が合わないことは十分に考えられます。

 

そのような場合、見切りをつけて調停を申し立てるか、弁護士に依頼することを検討しましょう。

 

②遺産分割調停・審判

 

相続人同士での遺産分割の話し合いがまとまらないときは、家庭裁判所に遺産分割調停の申立てを行います。

 

調停は、あくまでも話し合いの手続きになりますので、相続人全員の合意が得られない場合は調停不成立となってしまいます。

 

調停が不成立になると、自動的に遺産分割審判の手続きに移行します。遺産分割審判では、裁判官が一切の事情を考慮して、遺産分割方法を決定します。

 

5 相続手続きを進める際のポイント

 

相続手続きを進める際には、以下の点に注意が必要です。

 

①相続手続きが終わるまでは遺産に手を付けない

 

相続手続きが完了するまでは、相続財産は相続人全員の共有状態ですので、遺産を処分するには、相続人全員の同意が必要になります。

 

相続手続きが終わるまでは遺産に手を付けないようにしてください。

 

②冷静に対応する

絶縁中の相手との話し合いで感情的になってしまいがちですが、百害あって一利なしです。できるだけ冷静に対応するようにしましょう。

 

当事者だけで話し合いをするのが難しいという場合には、弁護士に依頼するのもおすすめです。

 

③弁護士に代理人を依頼する

 

絶縁中の相手との間で相続争いが生じた場合は、弁護士に代理人を依頼するとよいでしょう。

 

弁護士に依頼すれば、本人に代わって弁護士が相手との交渉を行いますので、冷静に話し合いを進めることができます。

 

 

 

以上、絶縁中の兄弟姉妹との遺産分割について説明してきました。

 

実際の事案では、何を選択し、何を選択してはいけないかは微妙なことが多いです。

 

遺産分割でお悩みなら、まずは相続を専門とする弁護士に相談しましょう。

 

是非当事務所の初回無料相談をご利用ください。

 

相続を多数扱ってきた経験とノウハウから適切なアドバイスをさせていただきます。

 

▼お問い合わせはこちら▼

この記事の執筆者

島武広
島武広島法律事務所 代表弁護士(神奈川県弁護士会所属)
当サイトでは、相続問題にまつわるお悩みに対して、弁護士の視点で解説をしています。また、当事務所にて携わった事案のポイントも定期的に更新しています。地元横須賀で、「迅速な解決」を大切に代理人として事件の解決に向けて取り組んでいます。

初回相談は無料でお受けしておりますので、お悩みの方は、お一人で抱え込まず、ぜひ一度相続に注力する弁護士にご相談ください。
相続財産の分け方で困っている

相続財産の分け方で困っている

「親族が揉めていて話し合いが進まない」
「相続財産で争いたくない」

このような方はこちらをクリック »
財産の使い込みで困っている

財産の使い込みで困っている

「財産を使い込んでいる相続人がいる」
「預貯金の使い込みを疑われている」

このような方はこちらをクリック »
最低限の相続分がもらえない

最低限の相続分がもらえない

「親の財産を相続できない」
「遺言に自分の相続分が書いてない」

このような方はこちらをクリック »
不動産の売却に納得しない相続人がいる

不動産の売却に納得しない相続人がいる

「住宅の処理について揉めている」
「親族間で話がまとまらない」

このような方はこちらをクリック »
相続人の一人が財産開示をしてくれない

相続人の一人が財産開示をしてくれない

「自分で調べようと思うがどうしたらいいか
わからない」

このような方はこちらをクリック »
相続したくない財産がある

相続したくない財産がある

「故人の借金を残していた」
「事情があって相続したくない」

このような方はこちらをクリック »
前妻との子との話し合いに不安がある

前妻との子との話し合いに不安がある

「聞いた事のない前妻と子どもがいた」
「突然、前妻が名乗り出てきた」

このような方はこちらをクリック »
遺言無効を主張したい

遺言無効を主張したい

「親が認知症だった」
「故人が書いた遺言だと思えない」

このような方はこちらをクリック »

FAQ

   

選ばれる理由

   

弁護士に相談するタイミング