相続財産・相続人調査
目次
大切な方がお亡くなりになり、それだけでも大変なところ、いざ相続といっても何をすればよいかわからない、また、ある程度相続について知っていても、被相続人の方が何を残し、誰と遺産分割すればよいかわからない、そんな方もいるのではないでしょうか。
ここでは、①モノ、②ヒトに分けて説明していきたいと思います。
1 モノ、~相続財産調査について
生前から自分の財産すべてを他人に公開している方は稀、というよりそんな方はほとんどいないと言ってもよいのではないでしょうか。
たとえ身内であっても、どんな財産があるか明らかにしない隠し財産があるという方がいらっしゃることでしょう。そして相続財産調査は、そういった隠し財産すらも対象に探していかなければならないため、想像以上に腰が折れる作業です。
そのような苦労が待っているにも関わらず、相続財産調査は後回しにしているほど時間的な余裕がないといえます。というのは、相続放棄をするには相続を知ってから3ヶ月以内、相続税申告は10ヶ月以内と期間が定められているからです。
とはいえ、相続財産調査にはいくつかのコツがあり、それさえわかっていれば、それほど苦労せずに正確な財産を把握できるようになります。ただ、被相続人の自宅を整理整頓するだけだと見つかるものも見つからなくなります。コツを押さえながら相続財産調査を行うようにしましょう。
以下、対象の財産毎に見ていきましょう。
①不動産
被相続人がどのような不動産をどれだけ所有していたか調査する必要があります。
この場合、遺品整理の際に不動産の権利書や登記簿謄本などがないか探すという方法を思いつくことでしょう。それ以外にも不動産については比較的容易に全容が判明します。
それは不動産には税金がかかるからです。
まず、固定資産税の納付書が届いている可能性が強いため、郵便物をチェックするのもポイントです。仮に見つけられなくても次年度に請求書が送られてくるため、その段階で判明することが多くあります。
その他にも、市区町村役場で「名寄帳」を入手する方法もあります。
名寄帳とは、特定の地域内の不動産の所有者がすべて記載されているため、地区町村まで特定できていれば、名寄帳を確認することで市町村内のすべての不動産を把握することができます。
また、自宅以外に不動産を所有している場合、不動産を貸している場合などが多いため、確定申告をしている可能性があり、その場合所得を生んでいる全ての不動産が確定申告書に記載されています。確定申告書の写しや課税証明書を取得すれば、そこから明らかになります。
そして、不動産が判明したら法務局に行ってその土地・建物の現在の不動産登記簿謄本を取得してみましょう。過去に所有していたとしても、現在も所有しているとは限らないため、確認する必要があります。
②預貯金
預貯金は預金通帳があれば、それで足ります。しかし、預金通帳をどこに置いておくか親族に教える人はそれほどいないのではないでしょうか。
運が良ければ、セカンドバッグやタンスの引き出しにまとめて置いてあったり、金庫の中にきっちりと保管しているかもしれません。
厄介なのは、投資などに興味があり、頻繁に色々な口座間で預金を出入金されている方です。
見つかった通帳の履歴から判明することもありますし、過去に送られてきたハガキなどを活用して調査していく方法もあります。
また、横須賀のような街であれば、殆どの方がゆうちょ銀行、横浜銀行、かながわ信金、湘南信金に何かしら口座を設けていることが多いため、当該地域で重用されている金融機関に問いあわせてみるという方法も有効です。
勤務していた会社の取引銀行や取引支店を調査すると口座が判明する場合も多くあります。いずれにせよ、なにかしらのとっかかりを見つけ地道に調査していく他ありません。
なお、見つかった預金通帳は最終記帳日と現在とでは残高が同じとは限りません。必ず金融機関まで足を運んで記帳をしましょう。ただし、被相続人の死亡によって口座凍結されていて記帳ができない場合もあるため、そういった場合は「残高証明書」を取得しましょう。
③証券
株券などといった証券は、原則発券されないため証券会社や信託銀行に預けています。いわゆるメジャーな証券会社に問い合わせてもよいのですが、通常何かしらの取引があれば、証券会社から預金残高の明細が送付されてきたり、株主総会に合わせて株式を発行している会社から株主総会の案内が送られてくる段階で気づくことも多いといえます。
そのような証券会社からのお知らせが届いていれば、その内容をチェックし、証券会社などに問い合わせをしてみましょう。
しかし、最近はペーパーレス化が進んでいるため、近年ではパソコンやスマートフォンなどのメール機能が利用されることも多くなってきています。そこで、被相続人のパソコンやスマートフォンなどの中身(特にメール部分)は必ずチェックする必要があります。
被相続人の方がガラケーオンリーでメールなんてやらないアナログ派であれば、やはり郵便物でわかることが多いでしょう。
以上で「モノ」すなわち相続財産調査のコツについて述べてきましたが、もちろんこれがすべてではありません。
気をつけたいのは相続財産といってもプラスの財産だけでなくマイナスの財産も対象となっていることです。
こうした財産をすべて完全に調査しようと思えば、それだけ手間も時間もかかってしまいます。もし、上記のような調査をしたけどなかなか相続財産が把握できなかった、上記以外の財産の調査についても詳しく知りたい、といったご要望があれば、ぜひ当事務所にご相談ください。
そもそも、相続は100件あれば100通りの対応が必要になるといっても良い手続きです。専門家である私たち弁護士でさえなかなか手を焼く手続きなのです。そうであるため、法的知識がなかったり、相続手続きを経験したことのない方が、個々の相続問題にすべてを完璧に対応するのは困難と言わざるを得ません。
もちろん正しい情報を得ることは大切ですが、そういった情報の提供はもちろん、個々の相続問題に柔軟な対応を出来るのが弁護士の強みです。相続財産調査にお困りの方、その他の相続問題にお困りの方は、まずは当事務所にご相談ください。
2 ヒト~相続人調査について
いわゆる相続人の確定という「ヒト」に関する調査は「モノ」に比して楽だと言えます。それはなぜでしょうか。ズバリ「戸籍」が存するからです。日本では、古くは飛鳥時代から戸籍を設けており、一部諸外国と異なり戸籍のない人はいないといっても良い状況だからです。
被相続人の方の戸籍を出生時からすべて取り寄せ、そこから各相続人へ辿り着くまで、ひたすら戸籍を集めれば良いのです。
戸籍さえ集まれば、あとは相続人関係図を作成して、各相続人と遺産分割を行っていけば足ります。
そうであるとすれば、相続人の調査は、何の問題もなく簡単に行えるのでしょうか。
残念ながら通常そうはいかない、というのが答えとなります。
なぜなら、私たち弁護士と異なり、多くの方は戸籍を読むことは簡単なことではなく、現在の戸籍のようにコンピューターでワープロ文字にて記載されておらず、筆書きで残っている戸籍の方が多いからです。
また、被相続人の方が、出生から死亡まで同一市町村にいてくれたら楽なのですが、多くの場合何度か戸籍を移しており、その都度戸籍のある市町村に戸籍を請求しなくてはならないからです。
面倒だな、それならわかっている人だけで分けるか
などといっても金融機関や法務局は対応してくれません。
そのため、遺産分割協議が必要な場合は、その前に必ず戸籍調査を行いましょう。
なお、相続の際に必要となる、不動産や銀行預金口座の名義変更といった手続きは、戸籍謄本の提出が必須となります。単に遺産分割協議だけでなく、その他の手続きの際にも戸籍謄本の提出は必要になってしまうことからも、必ず戸籍調査は行うようにしてください。
戸籍謄本の種類について正しい知識を勉強して自ら調査を行うのは本当に大変と言えます。もし自分でと言うことでしたら、大きい書店へ行き、分かり易い説明の書いている書籍を購入してみてはいかがでしょうか。それでも、戸籍を辿っていくのは骨が折れる作業になるかと思います。
戸籍の収集
相続人調査をするときには、被相続人が出生から死亡するまでのすべての戸籍謄本、除籍謄本、改正原戸籍謄本を取得します。
戸籍には被相続人の婚姻や養子縁組、自分や妻の出産、子どもの認知などの事実が載っているので、精査していけばすべての相続関係が詳しく判明するのです。
戸籍には以下のような種類があります。
①戸籍謄本(こせきとうほん)
一般の戸籍謄本です。戸籍内の人が生きている場合、戸籍謄本となります。
②除籍謄本(じょせきとうほん)
戸籍内の人が全員死亡したり抜けて別の戸籍を作ったりすると、その戸籍は「除籍謄本」となります。
③改製原戸籍謄本(かいせいげんこせきとうほん)
戸籍の電子化などの改定によって戸籍が作り直されたとき、古い方の戸籍は改正原戸籍謄本となります。
④戸籍抄本(こせきしょうほん)
戸籍内のひとり分だけの戸籍です。相続人調査ではこちらは取得せず「謄本」を申請します。
戸籍の取り寄せ方法
①戸籍謄本の請求方法
戸籍謄本類は、すべて「市区町村役場」で保管されているので「本籍地」のある役所に申請して取得しましょう。
訪ねて行って申請書を出せば発行してくれますが、遠方の場合などには郵送による申請も可能です。郵便局で「定額小為替」を買って返送用の郵便切手と本人確認書類の写し、申請書を送付したら必要な戸籍謄本を返送してもらえます。
戸籍を取り寄せることができる方
戸籍謄本は個人情報なので、申請が認められるのは「相続人となる者(被相続人の配偶者や直系親族、その代理人)」のみです。
弁護士であれば、戸籍謄本、戸籍附票、住民票などすべて職権による申請が可能です。
さいごに
以上、①モノ、②ヒト、に分けて相続調査について述べてきました。
これを読んで「よし!やろう」と思っていらっしゃるのであれば、ご自身で十分に出来ると思います。
他方、「面倒だな」「仕事が忙しくてとてもそんな暇はない」などと感じた方は、まずは当事務所の初回無料法律相談にいらしてはいかがでしょうか。
これまで述べてきた負担を軽減させるためにも、戸籍調査や相続人とのやり取りを含む相続人調査や遺産分割協議といった手続きは、ぜひ当事務所にご相談ください。
この記事の執筆者
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当サイトでは、相続問題にまつわるお悩みに対して、弁護士の視点で解説をしています。また、当事務所にて携わった事案のポイントも定期的に更新しています。地元横須賀で、「迅速な解決」を大切に代理人として事件の解決に向けて取り組んでいます。
初回相談は無料でお受けしておりますので、お悩みの方は、お一人で抱え込まず、ぜひ一度相続に注力する弁護士にご相談ください。
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