財産分与で預貯金はどのように分けるか
目次
- 1 子ども名義の預貯金は財産分与になるか
- 2 共同生活のための預貯金
- 3 へそくりなどの隠し預貯金
- 4 結婚前の預貯金は財産分与の対象?
- 5 親からもらったお金は財産分与の対象?
- 6 別居後に取得した財産は財産分与の対象?
- 7 財産分与の対象となる場合の計算方法
- 8 預貯金を隠されたら
- 9 財産分与自体に応じない場合
- 10 預貯金口座に特有財産が混ざっている場合
- 11 通帳を開示しないことはできるのか
- 12 財産分与において法外な請求をしてくる場合
- 13 別居前に預貯金から多額を引き出している場合
- 14 自営業者であり、事業用口座として利用している預金口座を持っている場合
- 15 別居後に相手方が使っていたクレジットカードの請求により、預貯金から引き落とされて預貯金額が減額した場合
結婚してから貯めた預貯金は財産分与の対象に含まれます。
しかし、中には対象にならない預貯金もあります。
そこで、この記事では、どの範囲の預貯金が財産分与の対象に含まれて、どの範囲は含まれないのかということを解説します。
財産分与とは、離婚時に夫婦で築いた財産を分配することをいいます。
財産分与の対象となる財産は、現金、預貯金、不動産、保険金、自動車、株式等夫婦で築いた財産が対象になります。
これに対して、特有財産は、財産分与の対象にはなりません。
特有財産とは、夫婦の一方が単独で有する財産のことをいいます。
そのため、結婚後でも一方が他方の協力なく得た財産については、財産分与の対象とはなりません。
以下、個別に具体例を説明していきます。
1 子ども名義の預貯金は財産分与になるか
子ども名義である場合でも、夫婦が協力することで婚姻中に形成された財産といえ、共有財産となり、財産分与の対象となります。
それに対して、両親、祖父母からの進学のお祝い金、お年玉、お小遣いなどとして子どもに贈与された財産については、子どもの特有財産として財産分与の対象とならないと考えられます。
2 共同生活のための預貯金
当然共有財産として財産分与の対象となります。
一方が専業主婦または専業主夫である場合であっても、専業として家事などを行い、日々のやりくりをすることで余った生活費等については、これも夫婦が協力して得ることができた財産であるといえますので、財産分与の対象となります。
3 へそくりなどの隠し預貯金
へそくり口座などについても、夫婦が協力して、生活をやりくりして、一定額をへそくり分にまわすことができたといえるため、共有財産となります。
ただ、実際は隠されているからへそくりなのであり、その場合に相手が開示せず、こちらもその存在を知らなければ、事実上財産分与の対象から外れてしまいます。
4 結婚前の預貯金は財産分与の対象?
特有財産の代表例であり財産分与の対象とはなりません。
ただ、裁判官によっては、結婚してから長年月が経過している事案の場合に財産分与の対象とすることがあります。
同居期間が5年以上経過した事案で、特有性が失われると判断されたケースがあります。
なお、当該預貯金を定期などで明確に区別できる場合は、同居期間が長くても特有性は失われないとことが多いです。
5 親からもらったお金は財産分与の対象?
基本的には、特有財産として財産分与の対象とはなりません。
よく不動産を購入する際にもらう頭金の援助などがこれに該当します。
6 別居後に取得した財産は財産分与の対象?
特有財産として財産分与の対象とはなりません。
7 財産分与の対象となる場合の計算方法
財産分与は、基本的には結婚してから別居するまでの預貯金を対象としています。
そして、その対象の範囲は、結婚後から別居時までの各口座を合算した額になります。
財産分与は、原則としては、対象預貯金の2分の1ずつとされています。
ただ、夫婦のどちらかのご職業などから例外的に異なる分配がなされる場合もあります。
年収が億単位の方などは異なる割合になる可能性があります。
8 預貯金を隠されたら
財産分与をする際に、預貯金を隠すことがあります。
そのような場合ですが、金融機関名と支店名がわかれば大丈夫です。
しかし、金融機関もわからないという場合はなかなか難しくなります。
他の金融機関の履歴を見て、手掛かりを探していくことになります。
基準となる別居時において、すでに口座から払い戻されていても、費消されていない場合には、預貯金口座に存在しなくとも財産分与の対象となります。
しかし、費消されてしまい、現金としても存在しない場合には、原則として財産分与の対象となりません。
9 財産分与自体に応じない場合
離婚調停を申し立てましょう。
そして、調停期日で財産分与をしてくれないのでやむを得ず調停申し立てをした、と言い続けましょう。
通常であれば、財産分与の話し合いが始まります。
ただ、相手が強情な時は離婚訴訟をしなくてはならなくなります。
10 預貯金口座に特有財産が混ざっている場合
預貯金の中に、結婚生活の際に得た収入のみならず、それとは別で相続、贈与により得たお金が混じっている方もいると思います。
こういった場合は、相続、贈与により得たお金も共有財産とみなされてしまうことがあります。
財産分与の前に自分の預貯金のうち、結婚前に自分が貯めた預貯金であるということを証明できるようにしておきましょう。
通帳のコピーなどで証明していくことになります。
相続の場合は遺産分割協議書などです。
11 通帳を開示しないことはできるのか
通帳の存在が相手に知られているのであれば、弁護士による照会や裁判所の手続を用いられると通帳の開示が金融機関を介してなされてしまいます。
しかし、相手には財産の開示を求めて、自分の財産は隠すということは感情的対立を招くなどの弊害があります。
慎重に検討すべきといえます。
12 財産分与において法外な請求をしてくる場合
淡々と通常通りの対応をしましょう。
それでも話が平行線なら調停、裁判に進みましょう。
特に離婚訴訟では、そのような主張は一蹴されます。
13 別居前に預貯金から多額を引き出している場合
合理的な説明がなされない場合には、その額も含めて財産分与の対象となってしまうことがあります。
そのため、払い戻しが合理的であると説明できるようにしておきましょう。
14 自営業者であり、事業用口座として利用している預金口座を持っている場合
自営業者として働いている場合には、事業用口座を持っている場合が多いです。
このような預貯金についても、財産分与の対象となるのかは、義務者としては気になるところではあると思います。
夫婦が事業を経営している場合は、会社法人名義口座であれば、第三者名義の財産といえ、夫婦の共有財産とはいえないため、原則として財産分与の対象とはなりません。
しかし、個人名義の事業用口座については、財産分与の対象となる可能性があります。
そうならないためにも、事業用の預貯金口座と、家計用の預貯金口座を明確に区別することが重要です。
15 別居後に相手方が使っていたクレジットカードの請求により、預貯金から引き落とされて預貯金額が減額した場合
別居後に相手方が持っているカードを利用し、その請求が別居後にきて、預貯金口座から引き落とされるという問題もあります。
婚姻費用の清算として相手方に請求することが通常です。
以上、預貯金についての財産分与について述べてきました。
実際には事案ごとに対応が変わってきます。
まずは専門家である弁護士に相談しましょう。
是非当事務所の初回無料相談をご利用ください。
離婚弁護士として、長年多数の案件を扱ってきた経験とノウハウから、適格なアドバイスをさせていただきます。
この記事の執筆者
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