生前贈与で独り占めされてしまったときの対応法

相続人であるにもかかわらず、他の人に多額の生前贈与が行われ、遺産を全くもらえない、そんなことが起こります。

生前贈与自体は有効であり、それ自体を争うことはできません。

ただ、遺留分請求をすることで一定の遺産相当額を取得する可能性があります。

以下説明していきます。

 

遺留分とは、財産の所有者が亡くなった場合、一定の法定相続人に保証されている最低限度の遺産の取り分のことです(民法1042条)。ただし、法定相続人の中でも兄弟姉妹・甥姪には遺留分は認められていません。

生前贈与は「遺産の前渡し」と考えられるため、生前贈与も遺留分の対象になります。

 

認められている遺留分は法定相続分の半分です(直系尊属は1/3)。

遺留分の請求が認められれば、たとえ遺産がゼロだったとしても、法定相続分の半分を受け取ることができるのです。

 

遺産がいくらか残されていた場合は、特別受益の持ち戻しを求める方法もある

遺産が残っている場合、「特別受益の持ち戻し」を求めた方が、より多く財産を取り戻せる場合があります(民法第903条)。

 

生前贈与で遺留分が認められるための要件

以下の通りです。

  • 死亡前1年以内の生前贈与であること
  • 死亡前10年以内に相続人に対して行われた特別受益であること
  • あげる人・もらう人双方が遺留分を侵害することを知っていたこと

この3つの条件は

 

 民法第1044条 

贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、一年前の日より前にしたものについても、同様とする。

2 第九百四条の規定は、前項に規定する贈与の価額について準用する。

3 相続人に対する贈与についての第一項の規定の適用については、同項中「一年」とあるのは「十年」と、「価額」とあるのは「価額(婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与の価額に限る。)」とする。 

1 死亡前1年以内の生前贈与であること

財産の所有者が、亡くなった時からさかのぼって1年以内に誰かに生前贈与していた場合は、その受贈者に対して遺留分を請求できます。

受贈者は相続人に限りません。愛人や知人に贈与した場合も、愛人や知人に対して遺留分を請求できます。

 

2 死亡前10年以内に相続人に対して行われた特別受益であること

特定の相続人に対し、相続開始前10年以内の特別受益といえる生前贈与があれば、その受贈者に対して遺留分を請求できます。

この条件は受贈者が「相続人」であることに限ります。愛人や知人、相続権のない親族に対しては請求できません。

そして生前贈与の内容が「特別受益」である必要があります。

 

特別受益とは、ここでは上記条文の「婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与の価額に限る」の部分を指します。

 

つまり、生前贈与に限って言うと、下記にあてはまるものが特別受益です。

婚姻・養子縁組のための贈与…結婚挙式費用・結納金、養子縁組の持参金、など

生計の資本としての贈与…住宅購入資金・多額の教育費・扶養の範囲を超える生活費、など

ただし、いずれも贈与の額や目的、状況によって、特別受益と判断されるかどうかはケースバイケースです。

 

3 あげる人・もらう人双方が遺留分を侵害することを知っていたこと

贈与者と受贈者の双方が、生前贈与を行うと他の相続人の遺留分を侵害することを知っていた場合、遺留分を請求することができます。

この条件にあてはまる場合は、受贈者も時期も問いません。誰であろうが何年前であろうが請求できます。

 

では、「他の相続人の遺留分を侵害することを知っていた」とは、どのような状況を指すのでしょうか。

これは、「これ以上財産が増える見込みがないのに、財産の大半(遺留分を侵害する額)を贈与した」かどうかが論点になります。

 

具体的には

・贈与の時期

・贈与する人の年齢

・贈与する人の健康状態

・贈与する財産の全財産に占める割合

・贈与する人の財産が将来増加する可能性

などから判断していきます。

 

遺留分は受贈者から金銭で受け取る

贈与者の財産をもらうのではなく、遺留分侵害額に相当する額の金銭を受贈者から支払ってもらうことになります。

 

遺留分を請求する方法

遺留分はあくまで権利なので、請求しないともらえません。

ここからは遺留分を請求する方法を紹介していきます。

 

① 話し合いで請求する

② 配達証明付き内容証明郵便を送る

③ 遺留分侵害額請求の調停を起こす

遺留分侵害額請求の訴訟を起こす

まずは「①話し合いで請求する」から取り組み、話し合いがまとまらなければ②→③→④へと進んでいくことが殆どです。

弁護士に依頼するのであれば、言った言わないを防ぎ、時効を成立させないために②から始めることになると思います。

相手が内容証明郵便を受け取るかわからないなどというときは、③調停を申し立てることも検討するべきです。

具体的には専門家である弁護士に相談して決めることをおすすめします。

 

遺留分の1年の時効と10年の除斥

遺留分は下記いずれかを過ぎてしまうと請求することができません。

・「相続が開始したこと」「遺留分が侵害されていること」の両方を知ってから1年

・相続が開始してから10年

上記の期間が過ぎる前に、「遺留分を請求する」旨を受贈者に伝える必要があります。

1年はあっという間に過ぎてしまうので、遺留分請求を決断したらすぐに行動しましょう。

 

以上、生前贈与で独り占めされた場合について説明してきました。

まずは専門家である弁護士に相談しましょう。

何が出来て何が出来ないかを教えてくれます。

是非当事務所の初回無料相談をご利用ください。

遺留分を請求できるか、どのような手段を用いるべきかなど、全体的なアドバイスをさせていただきます。

 

この記事の執筆者

島武広
島武広島法律事務所 代表弁護士(神奈川県弁護士会所属)
当サイトでは、相続問題にまつわるお悩みに対して、弁護士の視点で解説をしています。また、当事務所にて携わった事案のポイントも定期的に更新しています。地元横須賀で、「迅速な解決」を大切に代理人として事件の解決に向けて取り組んでいます。

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