生前贈与では遺留分に注意を
目次
相続税制の変更により、増税されたため各種生前贈与を利用する人が増えています。
そんな生前贈与ですが、何も考えずに行うとその他相続人の遺留分を侵害し贈与を受けた側がトラブルに巻き込まれ、相続人間の関係にヒビが入ることとなります。
生前贈与をする際、遺留分について気をつけることを以下述べます。
1、生前贈与と遺留分
遺留分とは、民法が認めているのは法定相続分の1/2となります。
ですから、生前贈与がその他相続人の法定相続分の1/2を相続に渡せる範囲で行えば問題はないことになります。
2、遺留分を侵害する範囲
生前贈与による遺留分の侵害は、以下の3つのケースが考えられます。
①相続開始前の1年間に行われたすべての贈与(民法1044条1項前段)。
②贈与者(被相続人)と贈与の受贈者とが共に、遺留分権利者に損害を加えることを知って行った贈与(民法1044条1項後段)。
③相続開始前10年以内に行われた(相続人に対する)特別受益に該当する贈与(民法1044条3項)
①相続開始直前の贈与
→すべてが遺留分侵害の対象となります。
②遺留分を侵害する目的で行われた贈与
→やはりすべての贈与が遺留分侵害の対象となります。
③相続開始前10年以内の相続人に対する特別受益
→特定の相続人に対する金銭の授与・支援といった行為は、「特別受益」に該当する場合があります。
例えば、
住宅購入のための資金援助
扶養義務を超えた生活費の援助
その家庭の経済レベルを超える教育費の援助
このような特別受益は、過去10年分についてのみ持ち戻しを行うことが認められます」。
3、遺留分を侵害されたら何をすべきか
遺留分の侵害があった場合には、遺留分権者は、遺留分を侵害した者に対して、次のように遺留分についての支払を求めることができます。
(1)遺留分侵害は「金銭請求」できるようになった
今回の改正で遺留分侵害に対する請求は、どのような方法(贈与)による遺留分侵害であっても「金銭の支払い」を求めることができるように改められたので、より現実的な対処がしやすくなったといえます。
(2)遺留分侵害の負担の順序
裁判で遺留分の侵害に対する補償を求められたときには、受遺者や受贈者は、次の順序の通りに侵害額を負担します。
①遺贈
②死因贈与
③生前贈与
それぞれの贈与を受けた者に上記順番で請求していくこととなります。
(3)除斥期間と時効
遺留分の侵害額請求権にも時効や除斥期間が定められています。
したがって、遺留分侵害額請求は以下の時期までに行う必要があります。
贈与(遺贈)が行われたことで遺留分が侵害されたことを知った日から1年(時効)
相続開始から10年(除斥期間)
となります。
時効と除斥期間との違いは、消滅時効は一定の行為によって中断させることができますが、除斥期間は、どのような事情があっても中断することはありません。
以上述べてきましたが、生前贈与で相続税を下げることばかりに集中してしまうと他の相続人の遺留分を侵害し、生前贈与を受けた相続人が紛争に巻き込まれるおそれがあるということを頭の片隅に入れて遺言を作成されてはいかがでしょうか。
また、遺留分を侵害されてしまった際には、1日でも早く弁護士に相談することをお薦めします。といいますのは、生前贈与を受けた財産を使い切り、その他めぼしい財産がないと回収できなくなるからです。遺留分減殺請求は時間との勝負なります。
いずれにしても生前贈与などでお悩みの場合、当事務所の初回無料法律相談をお気軽にご利用ください。
この記事の執筆者
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