多人数相続人がいる場合の遺産分割

相続が発生し、相続人が多数人いる場合があります。

このような相続人が多数いる場合、どのような進め方をした方がよいのでしょうか。

 

1 多人数相続人がいる場合の問題点

まずは、相続人が多数人になる場合の問題点をいくつか挙げていきます。

 

  • 遠方に住んでいる人がいるため話し合いをするのが困難

相続人全員が近くに住んでいればよいのですが、多くの場合、市外や県外に住んでいる人がいるので、全員が一緒に集まることはできません。

 

  • 認知症などで判断能力が低下し、有効な意思表示ができない相続人がいる

相続人が多数人いる場合、相続人の中には高齢のため認知症等を発症しており、判断能力が低下している方がいらっしゃる場合があります。

症状の内容や程度にもよりますが、かりにご自身で有効な意思表示ができない状態である場合、そもそも連絡がとれない状態でしょうし、かりにそのような相続人が遺産分割協議書に署名押印をしても無効であり、遺産分割協議全体が無効となってしまうリスクがあります。

 

このような場合の対処方法としては、判断能力が低下した相続人に成年後見人を選任し、その成年後見人がご本人に代わって遺産分割協議に参加するという方法が考えられます。

しかし、成年後見人の選任には時間と手間がかかりますし、申立のために医師から診断書を作成してもらったり、保有している財産内容を家庭裁判所に提出したりするなど、手続きはとても煩雑です。

 

  • 未成年の相続人がいる場合がある

相続人に未成年がいる場合もあります。

未成年の場合、有効な法律行為を行うことはできませんので、親権者が未成年子に代わって遺産分割協議に参加することになります。

しかし、その親権者も相続人である場合は、未成年の子に代わって遺産分割に参加することができません。なぜなら、親権者の利益と未成年子の利益が相反する状態となるからです。

この場合、裁判所に申立てをして「特別代理人」を選任してもらい、親権者以外の第三者が特別代理人に就任する必要があります。この特別代理人が遺産分割協議に参加することになります。その手続を誰がするのか、また、手続をしたとしても一定の時間を要するという問題が生じます。

 

  • 行方不明、連絡がとれない相続人がいる

相続人の中に、行方不明であったり、連絡がとれない相続人がいたりする場合があります。

このような事情があったとしても、遺産分割から排除してよいということにならず、原則どおり、遺産分割に参加してもらわなければなりません。

そのため、行方不明である相続人の代理人として、「不在者財産管理人」を選任する必要があります。

この手続きは、家庭裁判所に対して、行方不明であることを調査して、その資料を提出しなければなりません。不在であることを調査するのは、一般の方にとってはとても困難な作業です。

 

  • 遺産協議中にお亡くなりになる方が出て、更に相続人が増えていく

多人数の相続人がいる案件の場合、遺産協議中にお亡くなりになる方が出てきてしまい、対象者が変動してしまうことが多々起こります。

再度戸籍謄本を取得して相続人を確定しなければならず、事案によっては、その調査中に更に他の相続人がお亡くなりになるということも生じえます。

 

2 相続人が多人数になる理由

 なぜ相続人が多数人になるのか?

 

①被相続人の兄弟姉妹や甥、姪が相続人である場合

被相続人に子や直系尊属(父母、祖父母)がいない場合、兄弟姉妹が法定相続人となるところ、兄弟姉妹が多いご家庭の場合は、相続人が多数になります。

そして、その法定相続人も被相続人と同世代あるいは年上であることから、すでに亡くなっている場合があり、この場合代襲相続といってその子にあたる方が相続人となります。代襲相続人が複数人いる場合もあります。

こういった事情があると、相続人が多数人になる場合があるのです。

 

②数次相続が発生している場合

被相続人の先代が亡くなったときに遺産分割協議が行われておらず、遺産の名義が先代のままになっている場合があります。

この場合、先代の相続と今回の被相続人の相続とを解決しなければなりません。

複数の相続が重なっているだけでなく、例えば、一次相続の相続人がすでに亡くなっている場合は、そのさらに相続人が権利を承継しますから、その承継した方と遺産分割をしなければなりません。

このような事情があると、相続人が多数になるのです。

 

3 相続手続きの進め方

このように相続人が多数人いる場合、どのような手順で相続問題を解決すればよいのか説明します。

 

①相続人調査、相続財産調査を行う

まず、戸籍等を取得して、相続人調査します。

そして、その相続人の情報に基づいて、被相続人の相続財産を調査します。

 

②相続放棄をするか、遺産分割協議をするかを決める

被相続人に借金などの債務が多い場合、あえて相続財産を承継しない判断も賢明です。

一度相続を承認してしまうと、後から放棄することができなくなってしまいますから、慎重に判断しましょう。

 

  • 他の相続人に対して書面を送る

遺産分割協議への協力を呼びかけ、全員がそれに応じるようであれば、遺産分割協議書を作成して、無事解決となります。

 

  • 調停の申立てをする

協議では遺産分割が成立しない場合、遺産分割調停を申し立てることになります。

相手方となる他の相続人の住所地を管轄する裁判所に申立をすることになります。ご自身にとって一番都合の良い場所を選択できます。

 

例えば、ご自身が横須賀に居住しており、その他相続人の誰かも横須賀に居住しているなら横須賀に申し立てをすればよいのです。

 

調停では話がまとまらない場合、審判に移行して裁判所が判断することになります。

その内容で確定すれば後は手続だけとなります。

 

  • 相続財産の名義変更などの手続

遺産分割が成立したら、その遺産分割協議書などをもとに、不動産の名義変更や預貯金の解約等を行います。

これにて相続手続きは完了となります。

 

以上、多人数の相続人がいる遺産分割について説明してきました。

手続が煩雑であり、何をどうすればよいか、個別に話をしていくか一斉に話をするのかなど、考慮すべき要素は多々あり、一般の方が解決に導くのは難しいかもしれません。

まずは専門家である弁護士に相談しましょう。

是非当事務所の初回無料相談をご利用ください。

相続案件を多数扱ってきた経験とノウハウから適切なアドバイスをして、解決までの道筋をつけさせていただきます。

 

 

この記事の執筆者

島武広
島武広島法律事務所 代表弁護士(神奈川県弁護士会所属)
当サイトでは、相続問題にまつわるお悩みに対して、弁護士の視点で解説をしています。また、当事務所にて携わった事案のポイントも定期的に更新しています。地元横須賀で、「迅速な解決」を大切に代理人として事件の解決に向けて取り組んでいます。

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