国債と投資信託の相続はどうなる?基本ルールと遺産分割・手続きの注意点を徹底解説

1.はじめに:国債や投資信託も相続財産に含まれる

親族が亡くなった際、遺産として思い浮かぶのは不動産や預貯金が多いですが、亡くなった方(被相続人)が保有していた国債や運用していた投資信託などの金融商品も、当然に相続財産となり、相続税の課税対象となります。

近年は少額から投資を始める人が増えており、相続財産に投資信託や国債が含まれるケースも珍しくありません。

しかし、これらの金融商品は預貯金の払い戻しとは異なる特有の手続きやルールが存在するため、事前に正しい知識を持っておくことがスムーズな相続手続きにつながります。

 

2.国債や投資信託は「当然には分割されない」

相続が発生した際、預貯金などの金銭債権(可分債権)については、法定相続分に応じて当然に分割されると考えられていた時代もありました。

しかし、平成26年(2014年)の最高裁判所の判例により、国債および投資信託は相続開始と同時に当然に分割されることはなく、遺産分割協議の対象になるという判断が下されています。

投資信託が当然に分割されない理由としては、投資信託の受益権には、償還金請求権や収益分配請求権といった金銭を受け取る権利のほかに、運用状況を監督する帳簿書類の閲覧請求権など、委託者に対する監督的機能を有する権利が含まれており、単なる金銭債権のように単純に分割できる権利ではないためとされています。

また、国債についても、法令によって額面金額の最低額(例えば1万円など)や権利の単位が定められており、1単位未満での権利行使が予定されていないため、相続分に応じて自動的に細かく分割されることはないと判断されました。

したがって、これらの金融商品を各相続人が個別に請求して払い戻しを受けることはできず、遺言書がない限りは相続人全員による遺産分割協議によって誰がどのように取得するかを決める必要があります。

 

3.投資信託の相続手続きと遺産分割

投資信託は、専門家が複数の投資家から集めた資金を運用し、その利益を分配する仕組みの商品です。

投資信託の相続手続きは、おおむね以下の流れで進められます。

口座の特定と残高確認:まずは投資信託を管理している証券会社や信託銀行を特定します。

オンライン取引の場合は、メールの履歴や預貯金口座の入出金記録(分配金の入金など)から特定できることがあります。

金融機関に被相続人の死亡を連絡し、遺産分割協議のために評価額(残高)を確認します。

口座の開設と移管手続き:投資信託は、被相続人の口座のまま売却して現金化することはできません。

財産を取得する相続人が決定したら、その相続人の名義の証券口座等へ投資信託を移管する必要があります。

相続人が該当する金融機関に口座を持っていない場合は、新たに口座を開設しなければなりません。

必要書類の提出:遺産分割協議書(または遺言書)、被相続人および相続人の戸籍謄本、印鑑登録証明書などを金融機関に提出して移管手続きを完了させます。

 

4.国債の相続手続きと遺産分割

国債は国が発行し、利子や元本の支払いを国が責任を持って行うため、安全性の高い投資商品とされています。

  • 残高証明書の取得:預託している銀行や証券会社に連絡し、残高証明書を請求して保有金額を正確に把握します。
  • 遺産分割の取り決め:個人向け国債は1万円単位での分割が可能なため、複数の相続人で分ける場合は1万円単位での分割内容を遺産分割協議書に記載します。

取得する残高証明書の内容を正確に書き写すことで、手続き時のトラブルを防げます。

  • 移管または換価(現金化):国債も株式や投資信託と同様に、名義書換依頼書や戸籍謄本、遺産分割協議書などを提出して手続きを行います。

個人向け国債は原則として一定期間売却できない制限がありますが、相続の場合は例外的に中途換金が認められます。

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ただし、固定金利の場合は「中途換金調整額」という解約料のようなものが発生することがあるため注意が必要です。

 

5.遺産分割の3つの方法

国債や投資信託を相続人間で分ける際には、主に以下の3つの方法があります。

現物分割:投資信託や国債をそのままの形で、各相続人に口数や金額単位で振り分けて移管する方法です。

  • 代償分割:1人の相続人が投資信託や国債をすべて(または大部分を)取得し、代わりに他の相続人に対して自身の現金(代償金)を支払って公平を図る方法です。

口数単位で細かく分割する手間が省けるメリットがあります。

ただし、代償金の支払いであることを遺産分割協議書に明記しておかないと、単なる贈与とみなされて贈与税が課されるリスクがあるため注意が必要です。

  • 換価分割:投資信託や国債を売却して現金化し、その現金を相続人間で分ける方法です。

現金化するためには、あらかじめ代表となる相続人を決めてその人の口座に移管してから売却手続きを行う必要があります。

公平に分けやすいことからよく選ばれる方法です。

 

6.相続後の分配金と税金に関する注意点

国債や投資信託の相続においては、評価額や税金面でも気を付けるべきポイントがあります。

  • 相続開始後の分配金等も遺産分割の対象になる:被相続人が亡くなった後に発生し、口座に入金された投資信託の収益分配金や元本償還金についても、当然に分割されることはなく、遺産分割の対象になると最高裁(平成26年12月12日判決)で判断されています。
  • 相続税評価額の基準:相続税の計算において、投資信託や国債の評価額は「相続が発生した時点(被相続人が死亡した日)の価格」が基準となります。
  • 譲渡所得税の発生:換価分割などで投資信託を売却した際、被相続人が取得した当時の価格よりも売却時の価値が高くなっていた場合、その利益(差額)に対して315%(所得税・復興特別所得税15.315%、住民税5%)の譲渡所得税が課せられます。

売却して得た現金をそのまま分けられるわけではなく、税金が差し引かれる可能性がある点を考慮して遺産分割を行う必要があります。

  • 価格変動のリスク:投資信託の基準価額は毎日変動します。

相続開始時から実際に名義変更・売却を行うまでに価値が大きく変わっていることも珍しくないため、手続きのタイミングには注意が必要です。

 

7.まとめ:複雑な相続手続きは専門家へ相談を

国債や投資信託の相続は、単なる預貯金の解約手続きよりも複雑であり、口座の開設・移管手続き、価格変動リスクの考慮、税金の計算など多くの手間がかかります。

遺産分割協議がうまくまとまらない場合は、家庭裁判所での遺産分割調停や審判を利用して解決を図ることになります。

相続が発生してから慌てないためにも、生前に保有している金融商品や取引先の金融機関を家族に伝えておくことが理想的です。

もし手続きや遺産分割の判断に迷った場合は、金融機関の窓口に確認するとともに、遺産相続に強い弁護士に相談し、適切なサポートを受けることを強くお勧めします。

是非島・鈴木法律事務所初回無料相談をご利用ください。

相続を専門とする弁護士として、事案に即した適切なアドバイスをさせていただきます。

 

 

 

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