遺留分を渡したくないときに採る対策について
「遺留分」とは、兄弟姉妹以外の相続人に認められる、相続できる遺産の最低保障額のことを言います。この権利は非常に強力であり、簡単には制限することはできません。
ただ、いくつかの方法があることにはあります。
以下説明していきます。
1 遺留分の放棄
相続人には、遺留分を放棄することが認められています(民法1049条)。
遺留分の放棄が有効に行われれば、遺留分侵害額請求ができなくなります。
ただし、遺留分の放棄は権利者である相続人が任意に行うものであって、強制はできません。
正直あまり有効な方法ではありません。
というのは、事前に遺留分を放棄することを同意する人なら、遺言の内容を受け入れてくれるはずです。
問題は、遺言しても自己の遺留分を請求する相続人がいることなのですから。
2 相続欠格
「相続欠格」(民法891条)に該当した者は、遺留分を含めたすべての相続権を失います。
相続欠格事由として挙げられているのは以下の5つで、例外中の例外でありこれを期待することは難しいといえます。
- 故意に以下のいずれかの者を死亡させ、または死亡させようとしたために、刑に処せられたこと
- 被相続人が殺害されたことを知りながら、告発または告訴をしなかったこと(是非の弁別がない場合、および殺害者が自己の配偶者または直系血族であった場合を除く)
- 詐欺または強迫によって、遺言やその撤回、取り消し、変更を妨害したこと
- 詐欺または強迫によって遺言をさせ、または遺言を撤回、取り消し、変更させたこと
- 被相続人の遺言書を偽造、変造、破棄または隠匿したこと
3 相続廃除
虐待や重大な侮辱などの著しい非行があった推定相続人については、被相続人となる人は、家庭裁判所に対して「相続廃除」を請求できます(民法892条)。相続廃除の審判を受けた推定相続人は、遺留分を含めたすべての相続権を失います。
欠格と同様に通常考えられない極限的な事例といえます。
① 被相続人に対する虐待
② 被相続人に対する重大な侮辱
③ 被相続人の重要な財産を勝手に処分すること
④ 重大な犯罪によって有罪判決を受けたこと
⑤ 配偶者が、不貞行為や悪意の遺棄により、被相続人との婚姻関係を破綻させたこと
4 遺言書の付言事項
遺言書を作成する際に、付言事項として「遺留分侵害額請求をしないでほしい」旨を記載することも考えられます。ただし、付言事項に法的拘束力はなく、あくまでも「お願い」にとどまります。
5 養子縁組をする
養子縁組をすると、子1人あたりの相続分が減ることに伴い、遺留分も減ります。
遺産を渡したい相続人の子どもなどと養子縁組することで遺留分の割合を減らすことができます。
6 生前贈与+相続放棄
相続人に対する生前贈与は10年間、相続人以外の者に対する生前贈与は1年間が経過すると、遺留分の基礎財産から除外されます。
相続放棄をした人は、もともと相続人であっても「相続人以外の者」として扱われます。
そのため、財産を与えたい相続人に対して生前贈与を行い、自身の死後に相続放棄をしてもらうことで、ほかの相続人の遺留分をかなり減らせる可能性があります。
7 生命保険
生命保険から支払われる死亡保険金は、受取人の固有財産であるため、遺留分の基礎財産に含まれません。
そのため、生前の段階で生命保険の掛金を払い続けることにより、遺留分の基礎となる相続財産を減らせます。
ただし、生命保険の価額が相続財産においてかなりの割合を占める場合、持ち戻されて遺産と扱われる可能性があることに注意してください。
以上遺留分を渡したくないときの対策について述べてきました。
上で述べた通り、遺留分は強力な権利であるため、簡単には制限できません。
それに対する対策もにわか仕込みで行う手痛いしっぺ返しに遭う可能性もあります。
ご自身のみで判断せず、専門家である弁護士に相談しましょう。
是非当事務所の初回無料相談をご利用ください。
事案に即した最適な方法をアドバイスさせていただきます。
この記事の執筆者
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