相続相談とAI
目次
はじめに 相続相談におけるAIの現状
インターネット検索の延長としてChatGPTやGeminiなどの生成AIに遺産分割の進め方や遺留分侵害額請求の可否などを相談する選択肢が広がっています。一見すると整理された回答が得られるためこれで十分だと感じる方も増えています。
しかしAIの回答をそのまま実務の現場に持ち込んでもそのままではうまくいかないケースや回答を鵜呑みにして不利な状況に陥るケースが少なからず発生しています。
AIを相続相談で活用できる場面
令和8年2月の段階でAIは調べもののツールとして非常に有用なレベルに達しつつあります。
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条文の存在を確認する用途や一般的な制度の概要を知る用途にはスピーディーで便利です。
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相続放棄の手続きや期限や遺産分割の基本的な進め方や遺言書の種類など基礎知識の全体像を把握するためには十分に役立ちます。
AIに相談する際の3つの落とし穴と危険性
基礎知識の収集には便利なAIですが使い方を誤ると重大な不利益を被るリスクがあります。
①AIがもっともらしい嘘をつくハルシネーションの危険性
AIは事実でない情報を正しいかのように回答してしまうことがあります。たとえば昭和2年の最高裁判決という当時は大審院しか存在しない架空の判例や日本国憲法200条という実際は103条までしかない架空の条文を平気で作り出すことがあるため人間によるファクトチェックが不可欠です。
②自分に都合のいい部分だけを聞いてしまう危険性
人間はこうだったらいいなという期待を持って質問しがちであり無意識に自分に都合の悪い可能性を無視してしまう傾向があります。AIは基本的に聞かれたことにしか答えないため見えないリスクを見落とす危険性があります。
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木を見て森を見ずの状態になり全体としては損をする危険性
AIが提示する回答は法律の断片的な知識としては正しくても相談者自身の状況全体に当てはめるとかえって不利になる場合があります。法律問題は婚姻期間や収入や財産状況などの前提条件が少し違うだけで結論が大きく変わるためAIの一般論だけを信じて動くと思わぬダメージを負いかねません。
相続トラブルや遺産分割調停におけるAIの限界
AIが相続の実務に完全には対応できないのには明確な理由があります。
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相続は人間関係と感情の問題であるという点
遺産分割や遺留分などの問題は単なる法律の適用ではなく過去の家族関係や感情が深く絡み合っています。どこまで踏み込むべきかどこで譲るべきかという微妙な調整は数値やデータになりにくくテキストで学習するAIが最も苦手とする領域です。
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遺産分割調停はデータ蓄積が起きにくいという点
相続紛争で多く用いられる遺産分割調停は非公開で行われ裁判のように詳細な書面が毎回提出されるわけではありません。そのためどうしてその結論に至ったのかというデータが形に残りにくくAIが得意とする学習の前提となるデータ蓄積が困難です。
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不確定要素が多く合理性だけでは進まないという点
調停の場では当事者に感情を吐露させる時間があったり法的に無関係な話が出たりと必ずしも合理的な進め方をしません。別の問題が出た途端に妥協が成立するなど人間の心理の機微が結果を左右するためAIの論理だけでは解決できないのです。
弁護士法違反のリスクと責任の所在
①非弁行為に該当する危険性
弁護士でない者が報酬を得る目的で法律事務を取り扱うことは弁護士法第72条で禁止されています。AIが一般的な法律情報を提供するだけでなく相談者の個別具体的な事案に対する法的判断に踏み込んだ場合この法律に抵触する危険性が指摘されています。
② AIは責任を取ってくれないという点
弁護士法が守ろうとしているのは国民の権利と利益です。弁護士には守秘義務や弁護士賠償保険など依頼者を守るための仕組みが整っていますがAIにはそれがありません。AIの回答を信じて自ら不利な証拠を作ってしまったとしてもAIは一切の責任を取ってくれません。
まとめ AIと専門家の賢い使い分け
AIは情報収集の入口や基礎知識を整理する優秀なアシスタントとしては非常に便利ですが手軽に調べられることと安心して任せられることは全く異なります。
相続問題の本質は一般論ではなくそのご家庭にとっての最適な着地点を見つけることにあります。AIを使って制度の概要や全体的な方向性を把握したうえで最終的な決断や具体的な戦略の構築については実務経験と責任を伴う弁護士に相談することが後悔しないための最大のポイントです。
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