きょうだいで土地を相続・分割するときに気を付けるべきこと
目次
親の遺産に土地がある場合は、きょうだい同士で相続トラブルが起こることがままあります。
土地は預金のように法定相続分で分割することができないうえ、きょうだいの誰かが住んでいると売却する訳にもいかない場合があります。
ここでは、土地の相続できょうだいのトラブルを回避する方法や、生前の対策などをご紹介します。
1 法定相続分
親の遺産はきょうだい同士では均等に分割することが原則です。
ただし、きょうだいのうち誰かが親の介護をしていた場合は、寄与分としてその人が相続する財産を上乗せできる場合もあります。
一方、親から多額の贈与を受けていた人については、特別受益があったとして相続する財産を減らす場合もあります。
なお、親が生前に遺産の分け方を決めて遺言書に記載していれば、原則としてそのとおりに遺産を分割します。
2 土地をきょうだいで公平に分割することは難しい
土地は現預金とは異なり公平に分割することが難しい財産です。
土地を区切ることもできますが、区画ごとに条件が異なれば地価も異なり、必ずしも公平に分けられるとは限りません。
3 きょうだいで揉めるケース
以下のケースが挙げられます。
土地以外の財産が少ない
親の遺産が自宅とわずかな現預金といったケースでは、きょうだい同士でもめることが多いです。
土地以外の財産が少ない場合は、土地を売却して現金に換えて分割することになります。
しかし、きょうだいの誰かが自宅に住んでいる場合は住まいを失うわけにはいかないため、きょうだい同士のトラブルが起こりやすくなります。
現預金が少ない
親が亡くなるまでには医療費や介護費用など多額の出費があり、短い間に現預金が減ることもあります。そういった場合には土地を相続する人とそうではない人の差が生じ、トラブルになりやすいです。
遺言書がない
遺言書があれば、基本的には遺言で指定されたとおりに遺産を分割します。
遺言書がない場合は、相続人同士で遺産分割協議をして遺産の分割方法を決めます。
遺産を公平に分割できない場合はきょうだい同士のトラブルが起こり、遺産分割協議がまとまらなくなります。
遺留分を侵害された相続人がいる
遺言書があっても、きょうだい同士でもめる場合があります。遺言で一部の相続人が多くの遺産を相続して、遺留分を侵害された相続人がいる場合です。
遺留分とは、相続人に最低限保障される相続割合のことです。
相続した遺産が遺留分より少ない場合は遺留分を侵害されたことになり、多くの遺産を相続した人に対して金銭を請求することができます。
このように最低限すら認められない遺言がある場合、遺留分請求をする可能性が高まります。
土地の代償金の基準が支払う側ともらう側で食い違う
土地を公平に分割できない場合は、相続人のうち1人が土地を相続して、他の相続人に代償金を支払う代償分割を行う場合があります。
このときは、土地の代償金の基準、つまり土地の価格を相続税評価額で評価するか、時価で評価するかをめぐってきょうだい同士でもめることが多いです。
4 土地相続の手続きの流れ
ここで、土地を相続するときの手続きの流れをご紹介します。
- 遺言書の有無を確認する
- 相続人を確認する
- 相続財産を確認する
- 遺産分割協議を行う
- 土地の相続登記の手続きをする
以下説明していきます。
遺言書の有無を確認する
はじめに、亡くなった被相続人が書いた遺言書があるかどうかを確認します。
遺言書は自宅で保管されているほか、公証役場や法務局で保管されている場合もあります。自宅で見つからない場合は、最寄りの公証役場または法務局に問い合わせてみるとよいでしょう。
相続人を確認する
次に、誰が相続人になるかを確認します。
誰が相続人になるかは、家族の間で改めて確認するまでもないかもしれません。
しかし、被相続人に前配偶者の子や非嫡出子がいる可能性があります。
被相続人の戸籍を出生から死亡まで取り寄せましょう。
実際、私が担当した案件で、相続人の方が、被相続人の死後に聞いたことがない相続人がいたことを知るケースもありました。
相続財産を確認する
続いて、相続財産(遺産)の内訳を確認します。
被相続人が残した土地のほか、建物、現預金、有価証券など、金銭的な価値があるものは相続の対象になります。借金や未払いの税金など債務も相続の対象になります。
遺産分割協議を行う
相続人と相続財産が確認できれば、相続財産をどのように分割するか相続人全員で話し合います。この話し合いのことを遺産分割協議といいます。
遺産分割協議がまとまれば、遺産分割協議書を作成して合意の内容を書面に残します。
話し合いが決裂した場合、遺産分割調停、審判へ進むこととなります。
土地の相続登記の手続きをする
遺産分割協議で誰がどの財産を相続するかが決まれば、相続による土地の名義変更を行います。
5 共有分割はなるべく避けたい
きょうだい同士で土地を分割できない場合は、土地を共有する形で相続する共有分割を行う場合があります。
土地を共有すると、将来売却するときに手続きの妨げになるなど、さまざまな問題が生じます。
以下説明していきます。
売却などで共有者全員の同意が必要
共有している土地を売却するには、共有者全員の同意が必要です。
このほか、土地の造成や建物の建築などを行う場合も、共有者全員の同意が必要です。
意見が食い違えば、思うように活用できなくなります。
固定資産税は個別に払えない
土地を相続した場合は、固定資産税を払わなければなりません。
土地を共有している場合は、代表者が共有者全員の負担分を取りまとめて納税することになっていて、共有者が個別に納税することはできません。
代替わりにつれて共有者が増え続ける
きょうだいの誰かが亡くなるとその持分は子に引き継がれ、その子が亡くなったときは孫に引き継がれます。やがてきょうだいの全員が亡くなったときは、きょうだいの子孫が全員で共有することになります。
このように土地の共有者の数が増えると、土地の処分や固定資産税の負担について話し合うことが極めて困難になります。
6 土地を相続する4つの方法
土地を相続する4つの方法をご紹介します。
- 土地を換金して相続する(換価分割)
- 土地を相続した人が他のきょうだいに代償金を支払う(代償分割)
- 土地を分筆して相続する(現物分割)
- 誰かが相続放棄する
以下説明していきます。
土地を換金して相続する(換価分割)
現物資産を換金して相続人同士で分割することを換価分割といいます。
分割が難しい土地を売却して現金に換えると、きょうだい同士で遺産を公平に分割することができます。
ただし、相続した土地を自宅や事業に利用している場合は適していません。
換価分割では、土地の売却益に所得税がかかることに注意が必要です。
また、希望する価格で土地が売れない可能性もあります。
土地を相続した人が他のきょうだいに代償金を支払う(代償分割)
相続人のうち1人が現物資産を相続して、他の相続人に代償金を支払うことを代償分割といいます。相続した土地を自宅や事業に利用していて、換価分割ができない場合に適した方法です。
代償分割をするには、土地を相続する人が十分な資金を持っていなければなりません。
資金がなければ自身の財産を売却して代償金に充てることもできますが、その場合は売却益に所得税が課税されます。
土地の価格には実際の取引価格のほか、公示地価、相続税評価額(路線価)、固定資産税評価額があります。
代償分割では、どの価格を基準に代償金を算定するかでトラブルになることが多いです。
土地を分筆して相続する(現物分割)
現物資産を換金せずそのまま相続人同士で分割することを現物分割といいます。
相続した土地をきょうだいで現物分割するために、土地を分筆する場合があります。
土地の分筆とは、登記上一つ(一筆)の土地として登録されているものを、二つ(二筆)以上に分けることをいいます。
しかし、分筆した土地が極端に狭くなると、利用が困難になります。区画ごとに条件が異なれば地価も異なり、必ずしも公平に分けられるとは限りません。
きょうだいが多い場合は、よほど広い土地でなければ合理的に分筆することができないでしょう。
誰かが相続放棄する
きょうだいの誰かが相続放棄することも一つの方法です。
親が営んでいた事業をきょうだいの誰かが引き継ぐ場合や、遺産が自宅だけで他に目立った財産がないような場合に有効です。
7 きょうだい同士のトラブルを回避する生前の対策
土地の相続できょうだい同士のトラブルが予想される場合は、生前に対策を取っておくとよいでしょう。
- 遺言書を書く
- 生前に土地を換金しておく
- 代償金を準備しておく
が考えられます。
遺言書を書く
きょうだい同士のトラブルを未然に防ぐには、生前に誰に何を相続させるかを決めて遺言書を書いておくとよいでしょう。
きょうだい同士で遺産を均等に分けるよう定めておくことが理想ですが、均等に分けられない場合でも遺留分には配慮することをおすすめします。
遺言書の内容が遺留分を無視したものであれば、きょうだい同士の金銭トラブルに発展する可能性があります。
生前に土地を換金しておく
相続の対象になる予定の土地が自宅や事業のためのものでなければ、生前に換金しておくことも一つの方法です。
しかし、土地を売却すると、相続税評価額が時価に比べて低いという土地の節税効果を生かすことができません。
代償金を準備しておく
土地を換金できない場合に遺産を公平に分割するためには、代償分割ができるように準備しておくことも有効です。
土地を相続する人が自分で代償金を準備するほか、土地を相続する人を受取人にした生命保険でも準備ができます。
生命保険の死亡保険金は受取人の固有財産であり、相続の対象ではありません。土地を相続する人は、受け取った死亡保険金を代償金に充てることができます。
8 相続税の注意点
土地を相続した場合は、相続税を申告・納税する必要があります。
相続税の申告・納税の期限は、被相続人が死亡した日の翌日から10か月以内です。
期限を過ぎると加算税や延滞税が課されるため、期限までに申告・納税するようにしましょう。
相続トラブルで土地を相続する人が決まらず、申告・納税が期限に間に合わない場合は、とりあえず法定相続分で分割したことにして申告します。のちに土地を相続する人が決まった場合に、申告をやり直します。
亡くなった親と同居していた人が自宅の土地を相続した場合は、相続税の申告で「小規模宅地等の特例」を適用することができます。
相続した土地の相続税評価額を引き下げることができ、相続税を抑えることができます。事業の後継者が事業用地(賃貸物件も含む)を相続した場合にも適用できます。
以上、きょうだいで土地を相続する場合について説明してきました。
実際には、その事案ごとに選択すべき方法は異なり、一筋縄ではいきません。
まずは専門家である弁護士に相談しましょう。
是非当事務所の初回無料相談をご利用ください。
相続事件を多数扱っている当事務所だから出来るアドバイスがあります。
この記事の執筆者
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当サイトでは、相続問題にまつわるお悩みに対して、弁護士の視点で解説をしています。また、当事務所にて携わった事案のポイントも定期的に更新しています。地元横須賀で、「迅速な解決」を大切に代理人として事件の解決に向けて取り組んでいます。
初回相談は無料でお受けしておりますので、お悩みの方は、お一人で抱え込まず、ぜひ一度相続に注力する弁護士にご相談ください。
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