遺産分割で相手が財産を隠しているときの対処法 弁護士が徹底解説
目次
1.遺産分割における「遺産隠し」とは何か?
親が亡くなり、いざ兄弟で遺産分割の話し合い(遺産分割協議)をしようとした際、「親と同居して財産を管理していた長男が、遺産はこれだけだと言って少しの通帳しか見せてくれない」「明らかに他にも預金や株があったはずなのに隠されている気がする」というトラブル(遺産隠し)が頻発しています。
遺産隠しとは、本来であれば相続人全員で分け合うべき財産(預貯金、不動産、株式、現金など)を、特定の相続人が意図的に隠蔽・秘匿する行為を指します。
遺産分割協議は、原則として「すべての遺産」をテーブルに乗せて話し合うものです。
もし財産の一部が隠されたまま協議が成立してしまうと、他の相続人は本来もらえるはずだった正当な取り分を失うことになり、深刻な経済的損失を被ります。
このような理不尽な事態を防ぐためには、「相手が隠している財産を自力で、あるいは法的な手段を使って探し出す」必要があります。
2.自力で隠し財産(預貯金・有価証券)を探し出す方法
相手が財産の開示を拒んだとしても、あなた自身が「法定相続人」であることを証明できれば、各金融機関に対して独自に調査を行う権限があります。
・銀行口座(預貯金)の調査
まずは親の自宅や遺品の中から、通帳、キャッシュカード、銀行からのカレンダーや粗品、郵便物などを探し出し、取引があった金融機関の「当たり」をつけます。
その金融機関の窓口に「親の戸籍謄本」や「自分の戸籍謄本・印鑑証明書」などを持ち込み、親が死亡した日の「残高証明書」を発行してもらいます。
さらに重要なのが「取引履歴(過去の入出金明細)」の請求です。
過去数年分(一般的に最大10年分)の履歴を取り寄せることで、親が亡くなる直前に長男がATMから多額の現金を不自然に引き出していなかったか(使い込みの有無)や、別の隠し口座へ送金していなかったかを確認することができます。
・株式や投資信託(ネット証券)の調査
証券会社からの配当金の通知書や運用報告書などの郵便物を探します。
近年は「ネット銀行」や「ネット証券」を利用している高齢者も増えており、通帳や紙の書類が存在しないため発見が遅れるケースが多発しています。
スマホやパソコンのアプリ、メールの受信履歴などを注意深く確認することが重要です。
3.自力で隠し不動産を探し出す方法
「親が他に土地やアパートを持っていたはずだ」という場合は、不動産の調査を行います。
最も確実なのは、毎年春に役所から送られてくる「固定資産税の納税通知書(課税明細書)」を確認することです。
ここには、その市区町村内で親が所有している不動産が一覧で記載されています。
もし通知書が見つからない場合は、親が不動産を持っていそうな市区町村の役場へ行き「名寄帳(なよせちょう)」を取得します。
名寄帳とは、その自治体内で特定の人物が所有する不動産をすべてまとめた一覧表のことです。
(※なお、2026年までに段階的に導入される「所有不動産記録証明制度」を利用すれば、法務局で全国の不動産を一括検索できるようになる予定です。)
4.相手の「使い込み」が発覚した場合はどうなるか?
取引履歴を調べた結果、親が亡くなる直前や死後に、相手が勝手に数百万円を引き出していた(使い込んでいた)ことが発覚したとします。
原則として、遺産分割は「死亡時に存在した財産」を分ける手続きですが、相手が使い込みを認めた場合には、その引き出されたお金を「遺産として存在しているもの」とみなして、遺産分割協議の中に組み戻して計算することができます。
もし相手が使い込みを認めない(「親の生活費や介護費用に使った」と嘘をつくなど)場合は、不当利得返還請求や不法行為に基づく損害賠償請求として、別途裁判で返還を求めていくことになります。
5.すでに遺産分割協議書にハンコを押してしまった場合
「親の遺産はこれだけだ」という相手の言葉を信じて遺産分割協議書に実印を押し、後になってから数千万円の隠し口座が発覚した場合はどうなるでしょうか。
このような場合、法律上「相手の詐欺によって騙された」あるいは「重大な勘違い(錯誤)があった」と主張して、成立してしまった遺産分割協議を取り消し、最初からやり直しを求めることができます。
ただし、相手がすんなりとやり直しに応じることはまずないため、最終的には家庭裁判所に「遺産分割協議無効確認の調停や訴訟」を起こして法的に戦う必要があります。
6.裁判所や弁護士の「強力な調査権限」を利用する
相手が通帳や郵便物をすべて隠し持っており、どこの銀行に口座があるか全く見当がつかない場合、個人での調査には限界があります。
その場合は、弁護士に依頼するか、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てて、以下の強力な制度を利用することを検討します。
① 弁護士会照会(23条照会)
弁護士が所属する弁護士会を通じて、金融機関や証券会社に対して「親の口座の有無や残高、取引履歴」の開示を求めることができる制度です。
個人で窓口に行く手間が省け、相手が隠している口座の尻尾を掴むきっかけになります。
② 裁判所の調査嘱託制度
遺産分割調停や裁判の中で、裁判所という公的機関の権限を使って金融機関に情報開示を命じる制度です。
弁護士会照会よりもさらに強力な効力を持ちますが、「〇〇銀行〇〇支店にあるはずだ」といったある程度の「当たり(特定)」をつける必要があります。
7.遺産隠しが疑われる場合は、一刻も早く弁護士へ
遺産隠しをするような相手との交渉は、当事者同士で行うと激しい感情的対立(争族)に発展し、精神的なストレスで疲弊してしまいます。
また、財産隠しは時間が経つほどお金が使われてしまったり、証拠が隠滅されたりして取り戻すのが難しくなります。
さらに、隠されていた財産が見つかった結果、遺産の総額が増えて「相続税の申告漏れ(脱税)」となり、後から税務署から重いペナルティ(追徴課税)を受けるリスクも潜んでいます。
少しでも「遺産を隠されているかもしれない」「使い込まれているかもしれない」と疑念を抱いた場合は、相手に直接問い詰める前に、まずは相続問題に特化した弁護士に相談してください。
弁護士が代理人となることで、法的な調査権限を駆使して隠し財産を徹底的にあぶり出し、あなたの正当な権利(遺産の取り分)を取り戻すための最強の盾と矛になってくれます。
是非島・鈴木法律事務所初回無料相談をご利用ください。
相続を専門とする弁護士として事案に即した適切なアドバイスをさせていただきます。












