遺留分請求は誰に対してできる?弁護士が徹底解説
目次
1.遺留分侵害額請求の相手方とは?
親が亡くなり、「全財産を長男に相続させる」という遺言が見つかったり、生前に特定の相続人だけに多額の贈与がされていたりした場合、他の相続人は最低限の取り分である「遺留分」を侵害されている可能性があります。
このようなとき、遺留分を侵害された相続人が金銭の支払いを求めることを「遺留分侵害額請求」といいます(2019年の民法改正により、現物返還ではなく金銭請求に統一されました)。
では、この請求は誰に対して行うのでしょうか。結論から言えば、遺言や生前贈与によって「本来の法定相続分よりも多く財産を受け取った人」が相手方となります。
具体的には、遺言によって財産を受け取った「受遺者」と、生前贈与を受けた「受贈者」の2種類に分けられます。
相手方は必ずしも親族や共同相続人に限られず、孫や愛人、第三者の法人などであっても、遺留分を侵害する財産を受け取っていれば請求の対象となります。
2.「受遺者」と「受贈者」の両方がいる場合の順序
実際の相続では、「長男には遺言で不動産を遺贈し、次男には生前に現金を贈与していた」というように、受遺者と受贈者の両方が存在することがよくあります。
このような場合、請求する側は「どちらに請求してもよい」わけではありません。民法1047条1項1号により、誰から先に請求すべきかの明確な順序が定められています。
第一のルールは、「受遺者(遺言で財産を受け取った人)」が、「受贈者(生前贈与を受けた人)」よりも先に遺留分侵害額を負担しなければならない、というものです。
被相続人の死亡時点に最も近い「遺言による贈与(遺贈)」を優先的に減殺の対象とすることで、過去の法律関係(生前贈与)の安定性をできるだけ保つという趣旨があります。
したがって、まずは受遺者に請求し、それでも遺留分侵害額に満たない(不足する)場合にのみ、受贈者に対して追加で請求することになります。
3.「受遺者」が複数いる場合の負担割合
遺言によって財産を受け取った受遺者が複数いる場合、たとえば「長男に2,000万円、長女に1,000万円を遺贈する」といったケースではどうなるのでしょうか。
この場合、民法1047条1項2号の規定により、複数の受遺者は、それぞれが受け取った財産の価額(金額)の割合に応じて遺留分侵害額を按分して負担します。
上記の例であれば、長男と長女の受け取った財産の比率は2対1となるため、遺留分侵害額も2対1の割合でそれぞれに請求することになります。
ただし、被相続人が遺言書の中で「遺留分の請求があった場合は、まず長女の財産から負担させること」といったように、負担順序について別段の意思表示(指定)をしていた場合は、その遺言の指定が優先されます。
4.「受贈者」が複数いる場合の負担順序
生前贈与を受けた受贈者が複数いる場合、たとえば「8年前に次男へ贈与し、4年前に長男へ贈与した」というように時期が異なるケースではどうなるでしょうか。
民法1047条1項3号の規定により、受贈者が複数いる場合は、より「新しい贈与(死亡時に近い贈与)」を受けた人から順に負担しなければなりません。
上記の例であれば、4年前に贈与を受けた長男に対してまず請求し、それでも不足する場合にのみ、8年前に贈与を受けた次男へ請求することになります。
古い贈与ほど、受け取った本人がその財産を前提に長年生活を築いているため、その生活をいきなり脅かすことを防ぐためのルールです。
なお、同じ時期(同時)に贈与を受けた人が複数いる場合は、受遺者が複数いる場合と同様に、受け取った財産の価額の割合に応じて按分して負担します。
5.死因贈与がある場合の考え方
「私が死んだら、この土地をあげる」といった、被相続人の死亡を条件とする贈与契約を「死因贈与」といいます。
遺贈、死因贈与、生前贈与の3つが混在している場合、法律上は明文の規定がありませんが、実務上および判例の傾向としては以下の順序で請求するのが一般的です。
まず「受遺者(遺言)」に請求し、次に「死因贈与を受けた人」、最後に「生前贈与を受けた人(新しい順)」に対して請求します。
死因贈与は生前贈与の一種ではあるものの、効力が発生するのが死亡時であり、最も新しい贈与と解釈されるため、通常の生前贈与よりも先に負担すべきと考えられています。
6.相手方が支払えない(無資力)場合のリスク
遺留分の請求相手が借金まみれであったり、もらった財産をすでに使い果たして無資力(支払能力がない)状態であったりするケースもあります。
しかし、先の順位の人が無資力だからといって、「代わりに後の順位の人(古い生前贈与を受けた人など)に請求しよう」ということはできません。
民法1047条4項により、受遺者や受贈者が無資力であることによって生じた損失は、遺留分権利者(請求する側)自身が負担しなければならないと定められているからです。
これは、負担の順序を厳格に守らせることで、後順位の人の法的安定性を保護するためのルールです。
7.請求先を間違えないために弁護士へ相談を
「誰に請求すべきか」「いくら請求できるのか」を正確に判断するためには、遺言書の内容だけでなく、生前贈与の有無や時期、財産の評価額を漏れなく調査する必要があります。
また、相手方が「共同相続人」である場合は、その相手方自身の遺留分を侵害しない範囲でしか請求できないなど、計算は非常に複雑になります。
さらに、遺留分侵害額請求権には「相続開始と侵害を知ってから1年」という短い消滅時効があるため、請求相手を調べている間に時効が成立してしまうリスクがあります。
時効が迫っている場合は、財産を受け取った可能性がある人全員に内容証明郵便で意思表示を行うなどの緊急対応が必要です。
請求先の間違いや計算ミスによる不利益を防ぐためにも、遺留分のトラブルは早めに相続問題に強い弁護士へ相談し、正確な見通しを立ててもらうことを強くお勧めします。
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相続を専門とする弁護士として事案に即した適切なアドバイスをさせていただきます。












