遺留分請求の請求となる財産とは?弁護士が徹底解説
目次
1.遺留分の「基礎財産」とは何か?
遺言書で「全財産を長男に相続させる」と書かれていたり、生前に特定の相続人だけに多額の財産が贈与されていたりした場合、他の相続人は最低限の取り分である「遺留分」を請求することができます。
この遺留分の金額を計算するためには、まず「どの財産をベースにして計算するのか」を確定させる必要があります。この土台となる財産の全体像を「遺留分算定の基礎財産」と呼びます。
基礎財産は、「亡くなった時点(相続開始時)で残っていた財産」だけではありません。被相続人が亡くなる前に誰かにあげてしまった「生前贈与」を足し合わせ、そこから「借金などの債務」を差し引いて算出します。
つまり、
【基礎財産 = 相続開始時のプラスの財産 + 算入される贈与 - 被相続人の債務】
という計算式になります。亡くなる直前に全財産を誰かに贈与して遺留分制度を骨抜きにすることを防ぐため、過去の贈与も合算して「パイ(全体の枠)」を広げる仕組みになっています。
2.基礎財産に含まれる「プラスの財産」
まずは、被相続人が亡くなった時点で保有していた財産(プラスの財産)をすべて洗い出します。
対象となるのは、現金、預貯金、不動産(土地・建物・マンションなど)、上場株式・非上場株式、投資信託、自動車、貴金属、骨董品などの金銭的価値があるすべての財産。
最近では、暗号資産(仮想通貨)やネット証券の口座なども対象となります。
また、被相続人が誰かにお金を貸していた場合(貸付金)や、未回収の売掛金などもプラスの財産としてカウントされます。
不動産や非上場株式などは、評価額をいくらとするか(固定資産評価額か、路線価か、実勢価格かなど)によって金額が大きく変動するため、実務上非常に争いになりやすいポイントです。
3.計算に合算される「生前贈与(特別受益)」のルール
生前贈与は、すべてが基礎財産に含まれるわけではなく、贈与の相手や時期によってルールが異なります。
①相続人に対する贈与(特別受益)
相続人(子どもなど)に対する贈与のうち、結婚資金、住宅購入資金、開業資金、あるいは生計の資本として渡された多額の金銭などは「特別受益」と呼ばれます。
この特別受益に該当する贈与は、原則として「相続開始前の10年間」に行われたものが基礎財産に合算されます(持ち戻し)。ただし、大学の学費や一般的なお祝い金など、親の扶養義務の範囲内とみなされるものは対象外です。
②第三者に対する贈与
息子の嫁や孫(養子縁組していない場合)、愛人、友人、あるいは施設や団体など、相続人以外の第三者への贈与は、原則として「相続開始前の1年間」に行われたものだけが合算されます。
ただし、贈与した側とされた側の双方が「これを贈与すると他の相続人の遺留分が減って損をする」と知っていた場合(悪意の贈与)は、1年や10年という期間制限に関係なく、何年前の贈与であってもすべて合算されます。
4.基礎財産から差し引かれる「マイナスの財産(債務)」
被相続人が残した借入金、未払いの医療費、未払いの税金、クレジットカードの未決済分などの「債務(マイナスの財産)」は、基礎財産から全額を差し引いて計算します。
ここでよく誤解されるのが「葬儀費用」です。葬儀費用は被相続人が死亡した後に発生した費用であり、喪主が負担すべきものと考えられているため、原則として遺留分計算における被相続人の債務としては差し引くことができません。
5.要注意!判断が難しいグレーゾーンの財産
遺留分の対象になるかどうか、判断が分かれやすい財産があります。
【生命保険金(死亡保険金)】
生命保険金は、原則として「受取人固有の財産」とみなされるため、遺留分の基礎財産には含まれません(相続税の対象になることとは別問題です)。
しかし、遺産総額に対して保険金の額があまりにも高額で、他の相続人との間に著しい不公平が生じるような特段の事情がある場合は、例外的に特別受益に準じて基礎財産に合算される可能性があります。
【死亡退職金】
会社の規定などにより受取人が指定されている場合は、遺族固有の権利として遺産に含まれないことが多いですが、規定がない場合などは遺産として扱われることもあります。
【名義預金】
配偶者や孫の名義になっている口座でも、実質的にお金を出したのが被相続人であり、通帳や印鑑も被相続人が管理していた場合は「名義預金」として被相続人の財産(基礎財産)に含まれる可能性が高いです。
6.遺留分の対象外となる財産
墓地、墓石、仏壇、仏具、家系図などの「祭祀(さいし)財産」は、祖先を祀るための特別な財産として扱われるため、遺留分算定の基礎財産からは除外されます。
また、遺族年金についても、遺族の生活保障を目的とした固有の権利であるため、原則として遺留分の対象にはなりません。
7.正確な計算と回収のために弁護士へ相談を
遺留分請求(遺留分侵害額請求)を成功させるためには、今回解説したような「どの財産が含まれるか」「生前贈与はどこまで遡れるか」「不動産や株式の評価額はどうするか」を正確に算定しなければなりません。
これらを間違えると、数百万円から数千万円単位で請求額が狂ってしまうこともあります。
また、相手方が財産目録を開示してくれない場合、個人で隠し財産や名義預金、生前の預金引き出し(使途不明金)を調査することには限界があります。
遺留分には「相続開始と侵害を知ってから1年」という短い時効があるため、財産の全容がわからなくても早急な対応が必要です。
少しでも疑問や不安がある場合は、証拠となる資料(通帳や不動産の書類など)を持参のうえ、早めに相続問題に強い弁護士へ相談することをおすすめします。
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相続を専門とする弁護士として事案に即した適切なアドバイスをさせていただきます。












